出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B006TKYNSU/?tag=cinema-notes-22
映画『海洋天堂』は2010年公開のシュエ・シャオルー監督制作によるジェット・リー初の文芸作品です。
キャストも脇をウェン・ジャン、グイ・ルンメイ、カオ・ユアンユアンなどの豪華俳優陣が固めています。
自閉症支援施設における体験が基になっているだけあって、多くの人の共感を呼びました。
また主人公の父親もガンにより余命幾ばくもない時間の中で自閉症の息子と懸命に向き合う姿が魅力的です。
本稿では父シンチョンが「お父さんは海亀だよ」と言い続けた意味をあらすじに沿って考察していきましょう。
また、妻の死の真相やリンリンが公衆電話の使い方を教えた理由も併せて読み解いていきます。
演技派俳優ジェット・リー
本作最大の特徴は何といっても主演のジェット・リーの変化に尽きます。
ジェット・リーといえば誰もがご存知中国・香港の生み出した名アクション俳優です。
また社会貢献も積極的に行っており、公開後国際赤十字赤新月社連盟の初代親善大使に就任しました。
そんな彼がアクション俳優の鳴りを潜めて演技派として魅せたのが本作です。
以後の作品でもアクション俳優の評価が高いことを考えると、非常に珍しい役でしょう。
彼の繊細な演技力が高く評価され、幅のある俳優としてのステップアップが可能となりました。
そんな一大転機ともいえるリーの役所に目を向けつつ、じっくり本作を考察していきます。
「お父さんは海亀だよ」と言い続けた意味
余命幾ばくもないシンチョンは自閉症の息子ターフーにずっと「海亀だ」と言い続けました。
ガンの余命宣告を受けて静かに生きる彼が息子にそのように語った意味は何なのでしょうか?
親子の関係からその意味を読み解いていきます。
鶴は千年亀は万年
まず1つ目に、「鶴は千年亀は万年」という意味を表わしており、実際こう口にしています。
亀は長生きなんだよ
引用:海洋天堂/配給会社:クレストインターナショナル
寿命が長くめでたいことを表わしているのですが、これは恐らく父の叶わぬ願いでしょう。
本当はもっと長生きしたいのに、ガンによる運命を受け入れなければなりません。
その辛さや悲しさを堪えて、自分を亀にたとえることでやっと理性を保っていたのです。
おそらく自閉症の息子の前でそんな情けない姿は見せられなかったのではないでしょうか。
息子に長生きしてほしい
2つ目に、息子のターフーに海亀の如く長生きしてほしいという意味です。
水槽で泳ぐ親子の海亀を見て、2人を亀に準えていたことがその下地になっています。
父は誰よりも息子のことと向き合い、息子を大切に思っていました。
自分のことよりも息子の幸せのことを常に願い続ける行動していたのです。
その思いは見事に通じて、ターフーにとって1番の思い出が海亀の話となります。
親は子に自身の願いや夢を託すものだということをこの台詞は示しているのでしょう。
背中で見せる
3つ目に、シンチョンはターフーに人生の生き方を背中で見せたかったのではないでしょうか。
彼は料理や炊事洗濯など身の回りのことを教え続けますが、中々覚えません。
しかし、父亡き後息子は懸命に独り暮らしを初めて料理などを覚えていきます。