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2020年に公開された、黒人奴隷解放運動を主導したハリエット・タブマンをシンシア・エリヴォが演じた『ハリエット』。
ケイシー・レモンズが監督を務め奴隷の過酷な過去を描いた本作は、シンシアがアカデミー主演女優賞にノミネートされるほどの作品です。
映画の主人公ハリエットは、地下鉄道を使って多くの黒人奴隷を開放・逃亡させました。
奴隷に対する差別や偏見が強い激動のこの時代に、賞金がかけられたハリエットがなぜ多くの奴隷を開放できたのでしょうか。
さらに川に飛び込み逃亡を図ったのち、ギデオンを追い込んだにも関わらず、ハリエットは殺しませんでした。その背景には何があるのでしょう。
今回はこれらの点について考察します。
逃亡ルートと支援者の存在
ハリエットが多くの奴隷を開放できたのは、逃亡ルートを確保できていたことと、奴隷への支援者が多くいたことが原因です。
一方奴隷を追う側であるギデオンや奴隷狩りのハンターも、完璧には奴隷の逃亡へ対応することはできませんでした。
黙認する奴隷容認州
1800年代のアメリカ黒人奴隷は、奴隷制を容認する南部と、奴隷制に反対する北部の州に大きく分かれます。
しかし奴隷を容認する州でありながらも、奴隷の逃亡を「黙殺」していた州もあり、これらの州が逃亡成功に大きな役割を果たしました。
実際にデラウェア州は、奴隷制度を認めていながらも、州の都市には地下鉄道の拠点があるものもあります。
このような州の存在が、ハリエットなどの奴隷解放運動を助けていたのです。
網の目状の逃亡ルート
逃亡ルートには、実際鉄道が走っているルートもありますが、ほとんどの道は大きく蛇行している徒歩ルートです。
そのルートはアメリカ北部の州からカナダにかけて、網の目状に存在していました。
網の目状に張り巡らされた逃亡ルートを、ギデオンや奴隷狩りの人々だけで見張ることは不可能です。
その逃亡ルートを確保しつつ、拡大させることができた環境が、多くの黒人奴隷を救う結果となります。
ハリエットが、多くの奴隷たちを開放できたのは、奴隷狩りの目から逃れる方法がいくつもあったからと考えられるのです。
隠れ家と逃亡ルートの伝承方法
実際のアメリカで用意されていた、逃亡用ルートは、ほとんど紙などに描かれることはありませんでした。
伝承方法は口頭のみであったため、奴隷狩りの人々はすべての逃亡ルートや隠れ家を把握することができなかったのです。
例え数人の逃亡した奴隷たちを確保したとしても、その奴隷たちもすべてを把握しているわけではありません。
アメリカ北部の州に張り巡らされた逃亡ルートは、1つ見つかったところでビクともしないほど、数多く用意されています。
ハリエットは珍しい逃亡者
史実では逃亡ルートが過酷な道のりであるため、若い男性ばかりが逃亡を図っていました。
ハリエットは、その若い男性にも負けない体力があった女性だからこそ、後の解放運動でも活躍できたのです。