この辺りにも何か意図が感じられるようです
一輪のひまわり
ひまわりの花言葉は「貴方だけを見つめる」です。言い換えれば「一途な愛」ともいえます。
いつも太陽の方に顔を向けている、まさにひまわりそのものです。
一輪のひまわりはアントニオのことを愛し続けるジョバンナを表しているといってもよさそうです。
ひまわりの華やかさもまたソフィア・ローレンの容姿とダブって見えてきます。
ひまわりの群生
ロシアの大地に咲き誇るひまわりの群生の下にはおびただしい遺骸が埋まっているとされています。
ロシア戦線で命を失った様々な国の人々の遺骸です。
そのような目でひまわりの群生を見ると、何ともいえないもの悲しさが募ってきます。
戦争は多くの人に悲劇をもたらします。同時に多くの愛も引き裂いてしまうのです。
一途な愛が引き裂かれたのはジョバンナだけではないことを、ひまわりの群生は表しています。
戦争はこんなに多くの愛を引き裂き、人生をズタズタにしたといいたいのではないでしょうか。
ロシア戦線のイタリア
第二次世界大戦においてドイツと日本の戦いは比較的よく知られていますが、同じ枢軸国にもかかわらずイタリアの影は薄いといえます。
実はムッソリーニ独裁のもとイタリアは北アフリカ戦線とともにロシア戦線でも闘いました。
ドイツヒットラーのロシア侵攻に呼応した形だったようです。
計画はかなりずさんなもので、アントニオのような犠牲者を数多く出したとされています。
日本も太平洋戦争で大変な犠牲を強いられましたが、イタリアの犠牲も小さくはなかったのです。
戦争と人間
戦争は血を流す外交とも呼ばれます。国と国の利害衝突の現象として大局的に語られることが多いのです。
しかしながら実際の戦争は人間同士の殺し合いに過ぎません。
そこには正義も美もありません。凄惨な殺戮があるのみといえます。
そして戦争は直接戦場に行かない多くの国民の運命も狂わせるのです。
普通に愛し合い、喜び合う日常が許されなくなってしまいます。
兵士はアントニオのように記憶まで失うような地獄を経験するのです。
またジョバンナのようにたった一人の愛する人と別れなければならない女性も多く生んでしまいます。
戦争を国という視点で見ずに、人間の視点で見ることが極めて重要です。
【ひまわり】に込められた愛と反戦
映画【ひまわり】は声だかに反戦を唱えるのではなく、人の運命の変遷を通じて戦争の不条理さを説きます。
理不尽に引き裂かれる愛や、どちらを選択しても誰かが不幸になってしまう境遇に人を追いやってしまう無慈悲さがそこにはあります。
そしてこのような運命の奔流の中においても、たくましく生きる(生きざるを得ない)人の営みの現実もまた厳然として目の前にあるのです。