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人工知能やクローン技術が発達した未来の世界と人々の心理を描いたSF映画「LAPSE(ラプス)」。
アベラヒデノブと志真健太郎「HAVIT ART STUDIO」の今野里絵という、3人の監督が手掛けるオムニバス映画です。
東京を拠点とするディレクター集団「BABEL LABEL」らしい、独創的な描写と映像表現は注目されました。
また、SUMIREや柳俊太郎をはじめとしたキャスト陣の繊細な演技も特徴です。
「未来」をテーマとした本作は、作中の至るところに考察すべき点が存在しています。
今回は映画「LAPSE」に散りばめられた様々な謎や表現について考察していきましょう。
失敗人間ヒトシジュニアの意思が表すものとは?
クローンの失敗作である男性、ヒトシジュニアの人生観を描いた物語「失敗人間ヒトシジュニア」。
法律に則って処分される運命にあったヒトシジュニアですが、作中では1人の人間として生きるために行動します。
ここでは、失敗人間ヒトシジュニアの意思や行動が表現する意味について考察していきましょう。
立場の逆転
失敗人間ヒトシジュニアは、自分がクローンの失敗作であることを知るまで普通の人間として生活していました。
ニュースで報じられる、クローンに関する偏った情報を信じ、他人事のようにクローンに対し厳しい態度を取ります。
この時ヒトシジュニアが冷たい態度をとったのは、自分が置かれている環境に慢心していたからと考えられるのです。
「自分は守られている」と信じ、クローンのように虐げられることはないと思い込んでいたことでしょう。
ところがクローンの失敗作であることを知り、今度は虐げられる側の気持ちを味わうことになります。
ヒトシジュニアの行動は、恵まれた環境であっても突然自身を取り巻く環境が逆転し得ることを意味しているのです。
人権に対する疑問
「失敗人間ヒトシジュニア」において、クローンの作成は身近なものとなっています。
クローン人間も1つの生命体であることから、普通の人間と同様に尊重されるべきものであったといえるでしょう。
しかし作中におけるクローンは、それまで持っていた戸籍や人権を突然取り上げられて処分されてしまいます。
全ての人間が持っているはずでありながら、元となった人間と同じ姿のクローンには与えられない人権。
元となった人間を殺害し、成り代わろうとしたヒトシジュニア達の意思は、人権の不明瞭さを表現しているのでしょう。
ヨウの意思が表すものとは?
「リンデン・バウム・ダンス」に登場した主人公のヨウ。
作中では医療用人工知能satiのコントロールで延命治療中の祖母の世話をしていました。
しかし延命治療の中止が伝えられるとともに、彼女は自分の手で祖母を青酸ソーダで殺害します。
なぜヨウは、あえて自分で大好きな祖母を殺害したのでしょうか。