本作はそこで安易に不老不死の世界がいいものかどうかという答えを出しているわけではありません。

しかし、不老不死の悪い部分があるのであれば、絶対にそれ故の良い部分もまたあるはずです。

不死の世界だからこそ表現出来るテーマの先を開拓しようというチャレンジ精神の表れではないでしょうか。

大庭葉蔵のアンチテーゼ・堀木正雄

アンチテーゼ

2つ目にそんな葉蔵のアンチテーゼとして据えられているライバル・堀木正雄の存在もよく出来ています。

彼は貧困層に薬物を横流しして苦しめ吸い上げる、裏の闇ビジネスの天才だったのです。

表面上は凄く嫌な奴ですが、一方で単なる悪い奴だったわけではありません。

彼は不死に懐疑的視点を持ち、ロスト体にすることで現代社会のシステムから解放しようしました。

やり方こそ問題がありましたが、視点は確かなものであり現代社会への痛烈な批判となっています。

逆にいえば、運命が違っていたら葉蔵もまた正雄のようになっていたということではないでしょうか。

こういうライバルの存在こそが作品のテーマ性を別方向からしっかりと掘り下げてくれるのです。

この基本にとても忠実な所こそが本作の白眉でありましょう。

葉蔵と美子の一体化

藪の中のジンテーゼ

そんな社会の壁を乗り越えるために、ラストでは美香の心と一体化して戦いました。

この一体化は男女という性別を超えた自己超越の段階に至ったことの証明なのです。

変身ヒーローとして見ればウルトラマンエースのような存在に近いでしょうか。

男女の壁を乗り越え、ロスト体の壁も超えて最終的にはアプリカントに覚醒します。

これによって葉蔵という闇と美子という光が1つになって高次元のジンテーゼが生まれました。

ラストのカタルシスはこうした弁証法の形が取られていたからではないでしょうか。

システムを受け入れた上で乗り越える

看護師のための「困難を乗り越える力」 自分を思いやる8つのレッスン

本作が原典の『人間失格』を乗り越えたと思えるのはシステムとの向き合い方です。

原典の葉蔵は自己矛盾を突き詰めていく内に社会への絶望が深くなり、自殺しました。

ところが、本作の葉蔵は社会のシステムを受け入れ、更にそれを乗り越えて進化したのです。

これは太宰治が超えられなかった壁を本作が超えてみせた証だったのではないでしょうか。

社会に出ると、誰しもが仮面をつけて「大人」を演じているという問題は確かにあります。

しかし、そこで絶望を引きずって延々と社会批判を繰り返しても何の解決にもなりません。

そこで得た結末がシステムを受け入れた上で自身がその壁を乗り越えてみせるということでしょう。

単純な社会批判に終わらず、そのシステムを理解して変える側に回ることが大事だと示しました。

絶望のまま終わるか希望を見出すか

絶望を希望に変える勇気: アルコール依存症を克服した真実のストーリー (夢叶舎)

いかがでしたでしょうか?

本作は原作小説が余りにも有名すぎることもあり、評価は芳しくない作品のようです。

しかし、考察を見ていただければ分かるように本作は原典を決して蔑ろにしていません。

原典の持つ深いテーマ性を的確に抽出し、そこに現代の解釈やSFアニメの文法を総動員しています。

その結果として、原典が最後まで出せなかった現代社会への絶望に対する答えを出すことが出来ました。

激動の時代に突入する現代社会において、今後益々葉蔵や正雄のような人が増えてくるでしょう。

そんな時に絶望のまま終わるか、それとも希望を見出して時代を切り拓く英雄的存在となるのか?

その疑問を受け手に突きつけて、実に深い所まで問うた紛うことなきSFアニメの名作です。

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