このようにそれぞれの出自や宗教による派閥で簡単に差別や諍いが始まっていました。
そうした根深い人種差別の問題は直接的ではないにせよシャーロットとの恋路の障壁です。
人間関係によるどちらかが上かの利権争い程事態を拗れさせる問題もなかなかありません。
職業差別
2つ目に、大統領候補とジャーナリストという職業の肩書きの違いが挙げられます。
かたや国を背負って立つ人間であり、かたや文章書きの端くれというのは大きな差でしょう。
特にシャーロットはその肩書きに押し潰されそうになって関係を秘密にしようとしたのです。
このような職業差別という名の色眼鏡もまた問題をややこしくしていた要因ではないでしょうか。
同じ人間であるにもかかわらず、立場や職業が違うだけで見られ方も責任も全て変わってきます。
シャーデン・フロイデ
そしてこれが最も厄介ですが、人を貶めようとする負の感情が問題を複雑化しました。
ウェンブリーとチャンバースが結託したのも根っこにあったのは負の感情でした。
ドイツ語の心理ではこうした負の感情を「シャーデン・フロイデ」と呼びます。
いわゆる「他人の不幸は蜜の味」であり、人を貶めることを快楽に思う人達のことです。
なまじ活躍している人や出る杭があればそれを何とかして打とうとするのが人間でしょう。
そうした歪んだ心が最も人を遠ざけるのではないでしょうか。
肩書きという名の虚像
こうして見ていくと、本作が示したメッセージは肩書きという名の虚像なのかもしれません。
シャーロットとフレッドは決して仕事上の肩書きや地位で好きになったわけではないのです。
あくまでも成り行きに任せながら、焦らずにじっくりと関係を深めてお互いの魅力を知りました。
政治家もジャーナリストもその地位や肩書きは後付けに過ぎず、彼らもまた人間なのです。
その虚像に騙されることなく、自分の本当に大切なものを信じて貫くことが大事ということでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は様々な社会的問題や現代的な女性の政界進出など最新のテーマを扱っています。
しかし、読み解いていくと核にある本質はとてもシンプルでストレートです。
世間の目や地位・肩書きではなく心や体の中かから発せられる声に素直になること。
これが最も難しく、しかし最も大切な恋愛をはじめとする人生のエッセンスといえるでしょう。
それこそがシャーロットとフレッドの恋が変化球ながらも魅力的に見える理由なのです。