なぜあえて違和感があるフレーズをタイトルに冠しているのでしょうか。

原作者はこの件について「特に意味はない」としています。

この意図は「タイトルなんてどうでもいい」ということではなく「好きなように解釈して欲しい」と捉えるのが妥当でしょう。

そうでなければこのフレーズは生まれません。

「好きなように解釈して欲しい」

この意図にこそ、実は深い意味が隠されています。

この作品は音楽を中心として紡がれるストーリーであり、音楽は、楽譜を読んで楽譜の通り歌ったり楽器を奏でるものです。

楽譜をどう読むか、演奏者が作曲家の意図をどう解釈するかによって表現が変わります。

1曲の課題曲があっても、奏者によって全く違う曲に聴こえることもあります。

つまり、原作者が書いた楽譜をどのように解釈してもOK、音楽のように楽しんで欲しいという作者の願いが現れているのです。

タイトルの「嘘」に惑わされないで!

 四月は君の嘘 僕と君との音楽帳

タイトルの中に「嘘」という言葉があれば、当然観る者は何が嘘なのか探しながら映画を鑑賞します。

序盤はかをりが出ておらず、椿と公生を渡がからかっていますので、この誰かが嘘をついているのか?と身構えます。

それがかをりの登場を受けて、誰もの照準が彼女に向いたことでしょう。

しかし原作を知らない方にとって、かをりの何が嘘なのか分かりにくいのです。

また公生がピアノをやめた理由や母親の死因、母親の人柄や公生の世界がモノクロになってしまった理由などに注目してしまいがちです。

気づいたときにはもう終盤。種明かしがなされてしまいます。

つまり、原作者は「嘘」という言葉に注目して欲しいわけではないのです。

「嘘」探しはもちろん作品の醍醐味でしょう。

ですが、それ以上に登場人物の心の移ろいや葛藤に入り込んで欲しいというのが作者の思いなのではないでしょうか。

ですから『四月は君の嘘』というタイトルをどう解釈しても良く、「嘘」にばかり注目しなくてもこの作品は十分楽しめるのです。

手紙に込めたかをりの想いとは?

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それでもタイトルに「嘘」とあれば、気になる方が大半です。

何が嘘なのか見破れないままストーリーが進んでいき、ふと気づくと謎ばかりが生まれていたのではないでしょうか。

なぜかをりは公生が天才ピアニストだと知っていたのか。いつから知っていたのか。渡になぜアプローチをしないのか。

ここでようやく、かをりの心は渡ではなく公生に向いていたのだと気づくわけです。

そしてラストにはかをりが病気を隠していたことが発覚します。

ではなぜ嘘をつく必要があったのでしょうか。ストーリーから読み取れる2つの嘘を元に考察します。

嘘その1:元気な姿

本当は余命幾ばくもない身でありながら元気な女の子を装ったかをり。川に飛び込むシーンもありました。

もし彼女が自分の病気を隠さず公生や渡、椿と出逢ったらどうなっていたでしょうか。

心優しい彼らは恐らくかをりのことを過剰に気遣い、川に飛び込もうとすれば身を挺して止めたでしょう。

何をするにも制限がかかる日々は容易に想像できます。

公生に近づきたいがために身なりを変えたかをり。別人になってでも過ごしたい時間があったのです。

それは、絵に描いたような青春です。

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