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平成を代表する人気小説家である東野圭吾の作品で、映画化され話題になったのは2018年に公開された映画「ラプラスの魔女」。
物語は硫化水素を使った不可解な殺人事件を中心に繰り広げられるミステリー映画です。
大学教授や超能力者などこれまでの東野圭吾のミステリーでは登場しないタイプのキャラクターが多く出た作品となっています。
今回は、そんなラプラスの魔女について徹底的に解説していきます。
原作はガリレオシリーズで話題の東野圭吾!
東野作品には珍しいSFストーリー
今回原作を手掛けたのは福山雅治主演のガリレオシリーズ、阿部寛主演の加賀恭一郎シリーズなど何本もの映像化を果たしている東野圭吾。
今までの作品はいずれも刑事が登場するミステリー系の作品が中心でしたが、今回のラプラスの魔女は彼にとっては珍しいSFもの。
筆者自身も「これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった」とコメントするほど全くテイストが違う作品で話題になりました。
映画を楽しむ事ができた人は原作小説を読んでみることをお勧めします。
原作と映画の違いはなに?
原作と映画の最も大きな違いは序盤のストーリーにあります。
小説では円華のボディガードであり監視役の武雄という人物の視点で語られますが、映画では最初から青江修介を中心に物語が進みます。
そのためラプラスの魔女である円華の不思議な能力を目の当たりにしていくシーンがカットされているのです。
ストーリー展開をわかりやすくするために武尾の登場シーンを少なくし、代わりの役割を青江修介が担っているのではないのでしょうか。
「ラプラスの魔女」とは何か?
そもそもラプラスの魔女という言葉はどのような意味でしょうか。
元々ラプラスとは実在した人物のことを指しています。フランスの数学者「ピエール=シモン・ラプラス」。
彼は数学者としてだけでなく、物理学者でもあり天文学においても多くの研修成果を上げています。
そして彼の研究人生の中で「決定論」という概念を提唱しています。
「決定論」とは、わかりやすくいうと、未来で起こる現象は過去によって定められたものであるということを説いた論になります。
過去と未来の時間軸には密接な関係があり、この世のすべては過去によって決まる。つまり、過去が未来を支配しているということです。
そしてラプラスは数学・物理学・天文学のすべてにこれを応用できると考えました。
その結果、「この世に存在するすべての原子の運動を把握できれば未来に起こる事象を予測することができる」という壮大な仮説を立てたのです。
そして、あらゆる原子の状態を把握できる超越した能力を持つ存在を「ラプラスの悪魔」と定義したのです。
この「ラプラスの悪魔」からインスピレーションを受け、今回の映画のタイトルにもなった「ラプラスの魔女」というものが誕生しました。
悪魔ではなく「魔女」としたのは原作者である東野圭吾が主人公に女性を起用したかったからでしょう。
また、女性ならではの内に秘めたる思考や感情を表現するうえでも、悪魔より魔女とした方が適切だったのかもしれません。
人間の能力をはるかに超越する存在、宇宙にあるすべての原子の状態を把握する「ラプラスの悪魔」。
この存在が本作でもキーパーソンとなります。
ラプラスの悪魔がもつ能力とは?
ラプラスによればラプラスの悪魔とは『近世近代の物理学の分野で未来の決定性を論じるときに仮定された超越的存在』のことです。
つまりあらゆる物理的な現象の将来性を予測することができる能力を持つ存在であると前述しました。
作品中にも描かれていましたが、例えばサイコロを振ってどの目が出るのかを完全に予測することができます。
また、ガスを放った時にどのような軌道になるのかも予測可能です。
これは気圧や風速・気温などあらゆる要素が関係しているため、通常の人間には瞬時に計算して予測することは不可能なこと。
しかしこれが先天的にストレス無く出来るのがラプラスの悪魔といわれる存在なのです。
またこれを悪用することができれば確実に人間を殺すことができる、いわば悪魔の能力といえます。
そのため、ラプラスは「悪魔」と定めたといわれているのです。
ラプラスの魔女は誰?
ラプラスの魔女とはラプラスの悪魔の能力を身に着けた女性のこと。
この作品の中では広瀬すずさんが演じた少女「羽原円華」のことを指します。
作品中ではあまり描かれてはいませんが、今回の事件だけではなく今までの事件でも羽原円華は事件解決のヒントを出して捜査協力をしています。