女性の子宮のある位置を切り裂くシーンが何度か出てきています。
レプリカントは生殖機能を除去されていますが、人間には生殖行為ができます。
その子孫の未来が、人間の生み出せる「可能性」そのものなのです。
だからこそ反逆を企むレプリカントは「子ども」に固執しています。
人格を決めるものは…
ベースとなる記憶があると反応はより人間らしくなるという「博士の女性」の言葉は本当でしょうか。
人格を決めるものは、記憶だけなのでしょうか。
記憶はすべて?
記憶は人格を決めやすくするサポート役であっても、すべてではありません。
もし仮に記憶喪失になってしまったら、あなたは自分が誰かもわからないまま、どこかわからない場所を歩き回ることになるでしょう。
ただし、「ここは地球」「わたしは人間」などの基本的なことはわかるはずです。
記憶喪失であっても、基本知識があればそれなりに対応できるでしょう。
記憶喪失の上に言葉の通じない国に放り出されたとしても、それでも言語を吸収しながら、まずはジェスチャーで適応しようとするはずです。
レプリカントたちは基本情報をもって生み出されます。
記憶は人格構成のためというよりも、本当に「ささやかなプレゼント」として少しだけを植え付けられているにすぎないのです。
Kの矛盾した行動
いよいよKの矛盾した行動の意味について考えます。
現実で誰かの行動が矛盾していても「何も考えていない」ときが多いですが、作品として描かれるのには意味があります。
マダムとは…
幾度となく旧型レプリカントを殺害しても精神の安定していたK。
しかし排除を命じられた子どもが自分だと思ったときには、さすがに動揺を隠せずマダムに呼び出されます。
動揺の原因は子どもを殺害したからだと弁明しますが、マダムにその嘘は通用しません。
マダムと親しく、そしてある程度は信用しているKはそれをわかっていたはずです。
わかっていて通用しない嘘をついたのは、ある程度信用しているマダムに嘘をつかないための嘘をついて、「子どもは自分だ」と告げているのです。
その証拠に、マダムはKを解任しています。
彼女とは…
Kはホログラムの彼女に「君は本物だ」と答えながらも、彼女を重ねた街の女性と交わりました。
それは、どこかでK自身も「実体の彼女に触れたい」と思っていたからです。
その思いは自分がレプリカントではなく「産まれた」子どもであるかもしれないということへの期待と似ています。
Kはホログラムの彼女もレプリカントの自分も「偽物の人間」という意識があり、「所詮偽物だ」と諦めた態度を取りながらもどこかで「本物になりたい」と願っていました。
だから実体のない彼女は彼女ではないと認めることになったとしても、「人間と一体化して実体をもった彼女」を抱いてしまうのです。
デッカードを助けたこと
最大の矛盾はデッカードを助けたことでしょう。
この理由は至って単純で、K自身が「K自身の意志で助けた」と思いたかったからです。
新型レプリカントとして旧型のデッカードを始末するのはKの本来の任務です。