妻に本当のことをいえなかったのは、真実を語るには自分の過去も話さなくてはならないからです。
話そうとするとあまりに激しい苦痛が伴うため、これまで誰にも話せなかったのです。
そんな彼ですが、自分を疑う妻に意を決し過去を話しています。
25年前にヘンリーとジョージという男に拉致され、汚い穴蔵に放りこまれて4日間性的暴行を受けたことを告白
出典:ミスティック・リバー/配給:ワーナーブラザース
しかし、話し下手な彼は余計な言葉も口にしてしまうのです。
今いるのは吸血鬼と同じで、一度死んで蘇った者
自分で自分が信じられない
出典:ミスティック・リバー/配給:ワーナーブラザース
辛い過去は捨て何とか蘇ったという彼です。
しかし苦痛を受けた当時を思い出し、精神的身体的に同じ苦痛を追体験してしまうのです。
そんなフラッシュバックの状態を上手く伝えることが出来なかったのでしょう。
彼は話し下手なことで、妻にも上手く真実を伝えることが出来ませんでした。
当然セレステには理解できなかったことでしょう。
デイブはジミーにも伝えられなかった
ジミーとの口論でなぜ彼はケイティを殺したといったのでしょう。
デイブは少年を攫おうとした男を殺していますが、それを伝えようとすると自分でも混乱して話せなくなります。
このとき彼を襲っていたのは恐らくフラッシュバックです。
フラッシュバック渦中にいる人間が冷静に話せるわけがありません。
思考のまとまらなくなっていたデイブは、ジミーのいう通りの言葉を口にし殺されてしまったのです。
フラッシュバックが彼の真実を隠した
デイブが真実を上手く伝えられなかった理由のひとつに、フラッシュバックによる苦しみがあげられます。
過去に起こった記憶で、その記憶が無意識に思い出されかつそれが現実に起こっているかのような感覚が非常に激しい
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/フラッシュバック
彼の苦しみを表す証拠として、記憶が入り混じり嘔吐するシーンが描かれています。
デイブに起きた過去の事件が、全ての引き金だったという観方も出来るのではないでしょうか。
過去の犯罪に苦しんだのはデイブだけじゃない
実は俺たちはあのとき攫われていて、これは監禁された俺たちが見ている妄想なのではないか
引用:ミスティック・リバー/配給会社:ワーナー・ブラザース
攫われていない2人も疑心暗鬼に陥っています。
3人の中でデイブだけが攫われ、自分たちは助かってしまったという罪悪感を感じます。
ジミーやショーンも潜在意識の中に、もしあの時自分だけが攫われていたらという恐怖を持っていたのです。
罪には報いがあることを描いていた
本作は救いがない映画と例えられますが、深く考察していくと犯してしまった罪に対しての報いも描かれています。
人を殺して問題を解決するものには、それ相当の報いも用意されているのです。
劇中には犯罪は犯罪を生むという切ない方程式も描かれていました。
本作はそれぞれの立場から何度も観返したくなる映画といえるでしょう。