CIAが行った水責めなどの拷問が、ビンラディンの情報を得るために必要不可欠であったかのように描写されている、拷問が肯定されている、として訂正を求める書簡をソニーに送付して批判しました。

映画内ではマヤたちが拷問の力によりビンラディンの連絡係を突き止めたかのように描写されています。

ですが、実際は拷問で得た情報がビンラディン発見に役立つことはなかったそうです。

マケイン米上院議員はベトナム戦争で拷問を受けた過去があります。

拷問が必要不可欠となるような描写は、多くの人の誤解を招くということを懸念していました。

ビグロー監督が機密情報へのアクセス権を得ていたとの誤解

ビグロー監督が、オバマ大統領よりビンラディン暗殺作戦に関する機密情報へのアクセス権を与えられている、と報じられました。

国家の安全保障を脅かす機密漏洩と非難されましたが、ビグロー監督は否定しました。

ビグロー監督が作品作りのために入念なリサーチを行っていたことが、あらぬ誤解を招いたようです。

抗議の影響は?

本作はさまざまな物議を醸し、抗議を受けました。

その結果、CIAやアカデミー協会メンバーが異例の声明を発表するという事態にまで発展しました。

それだけ本作の社会的な影響力が強かったということでしょう。声明について見てみます。

CIA長官代行が映画に異例の声明を発表

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本作の制作については、CIAや国防総省が機密漏洩をしてまで協力したという疑いが出ました。

またCIAが事実を捻じ曲げ、ビグロー監督たちを自分たちの都合のよい方向へ誘導したという批判なども上院議会から出ました。

物議を醸す本作の制作協力に関して、CIAのマイケル・モレル長官代行は、CIAとして異例の声明を発表することになりました。

  • 本作は真実を描いた作品ではなく脚色されたものである。
  • CIAは広報部を通じて、この映画の制作者たちと交流をしたものの、それは他のエンターテインメントのプロジェクトと同じ扱いである。コントロールもできないし、していない。

アカデミー協会メンバーが本作に投票しないと声明を発表

米映画芸術科学アカデミー協会のメンバーである俳優のデヴィッド・クレノンは、反拷問を訴える団体の会合などで、本作にはアカデミー賞で投票しないという声明を発表しました。

  • 本作はアメリカの対テロ戦争で、拷問という非合法手段を正当化させてしまうような作品である。
  • 自身の良心に従い、本作の作品賞・脚本賞・主演女優賞を含む全カテゴリーに投票しない。

本作が疑われる原因

本作が余計ともいえる数多くの疑いをかけられ、物議を醸すのはなぜなのでしょうか。

本作が疑われる2つの原因

本作の扱っている題材はビンラディン暗殺という非常に大きなものでした。

高い社会性を帯びていることが、さまざまな疑いをかけられる原因になりました。

また本作にはドキュメンタリーのようなリアリティがあり、それがさらに疑いに拍車をかける要因となりました。

リアリティのある映画

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本作は実話を基にしたフィクションですが、どこまでが事実で、どこまでがフィクションなのか境界線が見えません。

全てのシーンが事実といわんばかりに、緻密でリアリティのある映画に仕上げられています。

例えばフィクションとされた拷問のシーン。

アメリカの上院議員が問題に取り上げ、CIAが異例のコメントを出す事態になるほど、リアリティがあります。

この拷問のシーンはフィクションの拷問ですが、疑いのない事実のようにスッと胸の内に入ってきます。

もし本作が陳腐な映画であったなら上院議員から抗議がでるような事態にはならなかったでしょう。

拷問にリアリティを感じる理由

拷問にリアリティを感じるのは、観る側がアメリカに不信感を抱いているからでしょう。

観る側には、アメリカがブラックサイトと呼ばれる国内法の及ばない収容所で、秘密裏に効果的な拷問をしているということが、事実のように感じられます。

9.11アメリカ同時多発テロに対するアメリカの怒りは凄まじいものでした。

アフガン侵攻、イラク戦争と続けてきたアメリカが、テロリストの尋問に手段を選ぶとは誰も思っていないのです。

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