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みなさんは「パラダイムシフト」という言葉をご存知ですか? いままで常識と思われていたものを劇的に変化させる革命的転換のことです。
『エイリアン』はまさに映画界にパラダイムシフトをもたらした作品です。
『エイリアン』が影響をおよぼした範囲はSF映画だけにとどまりません。
『エイリアン』以降の映画は多かれ少なかれ『エイリアン』の影響を受けているといっても過言ではないでしょう。
歴史的傑作『エイリアン』の魅力に迫ってみましょう。
新しい女性像
映画史における記念碑的な作品である『エイリアン』の主人公は女性。
エイリアン以前の映画において、女性に与えられた役割は基本的に男性に助けられるか弱いヒロインでした。
そんなヒロイン像をぶち壊し、エイリアンと果敢に戦い勝利したリプリーをヒーローだとすると、この作品のヒロインは猫のジョーンズだと言えるかもしれません。
猫のジョーンズ
乗組員はほぼ全滅し、生き残ったのはリプリーと猫のジョーンズだけでした。
映画のクライマックスで、エイリアンがじっとジョーンズを見つめていたのはハラハラしましたね。
ジョーンズが殺されてしまう……! かと思いきや、エイリアンはジョーンズを殺しませんでした。
劇場版ではカットされていましたが、ディレクターズカット版ではエイリアンはジョーンズが入っていたケージを蹴っ飛ばしていました。
お前なんかに用はない! ということでしょうか。容赦なく殺戮するエイリアンが、なぜ猫のジョーンズを見逃したのでしょう。
エイリアンの本能
アンドロイドのアッシュの言葉やそのあとの出来事からエイリアンの生態を要約すると、エイリアンは生存と生殖だけに特化した生物です。
生存と生殖への純粋な本能によって、種の存続を強固なものにするのです。
このことから、アッシュはエイリアンのことを「完璧な生物だ」と言ったのです。
人間には感情と理性と心があります。人間のもつこれらの特徴は、人類の発展には有効ですが、種の存続にはあまり向いていないのです。
社会が成熟すると(つまり人間の理性が優位になり文明が発達すると)、どこのどんな社会においても出生率が低くなります。
純粋な生殖と種の存続という行為を、人間はなかなかできない生物なのです。感情や理性が単純な生殖を邪魔します。
アンドロイドのアッシュからみると、人間は不完全な生き物だったでしょうね。
エイリアンの攻撃本能
エイリアンは己の生存のために、ほかの生物を容赦なく殺します。そこに感情や罪悪感はありません。純粋な殺意だけがあります。
なので、自分の生存を脅かす存在ではないなら、手を下す価値のないものと判断されるのでしょう。
たとえば、人間を殺さなければ生き残れない殺人者を思い浮かべてみてください。
自分を殺す危険のある人間を殺人者はすべて殺すでしょうが、アリやダンゴムシがいてもわざわざ殺したりしませんよね。
猫であるジョーンズはエイリアンを殺せないので、エイリアンもジョーンズを殺さなかったのかも知れません。
エイリアンの生殖本能
また、エイリアンにおいて攻撃本能と同じくらい強いのが生殖本能です。
猫のジョーンズをエイリアンが見つめていたのは、猫のジョーンズが卵の苗床として価値があるかということを見定めていたのかもしれません。
この映画におけるエイリアンは生殖を終えるとその役目を終え、あとは死を待つだけになります。
エイリアンはブレットとダラスに卵を産みつけ終えていたので、攻撃本能と生殖本能は弱まっていたのでしょう。