劇中に描かれていた時代は、最も学生運動が激化していた時代です。
国家権力との対立
彼らは武装を辞さず、大学をバリケード封鎖することによって主張の貫徹を試みた
https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の学生運動
ユカやヤスが大怪我をしていたように、学生たちと警官の衝突はけが人や死者を出すほど激しかったのです。
学生デモ活動が活発だったこの時代だからこそ国家や権力というものに対して、強く思うことがあったのでしょう。
暴力的な時代だった
学生運動がエスカレートしていく中、死者が出る事態になると国家権力の暴力が日本のすべてを牛耳るようになっていきます。
だからこそ岸は一切の暴力を排除して、三億円を奪い取ったのです。
『初恋』に描かれた時代は、戦後の国家権力に対して国民が不満を抱いていた時代といえます。
岸は本郷に戻る気がなかった?
社会への反抗の為に三億円の窃盗を成功させた岸ですが、元々本郷へ戻るつもりはなかったのでしょうか。
岸にとってみすずは犯行の為の道具だったのでしょうか。
みすずは仲間だった
岸は確かにみすずを利用し、犯行を成功させました。
しかしみすずは使い捨ての駒ではありません。
無免許でバイクも車も運転できるようになた女性、という条件が岸の計画に一致したのでしょう。
岸は最後までみすずを守り抜き姿を消しています。
おそらく岸にとってみすずは、共に権力に抗う仲間だったのでしょう。
本郷に帰るつもりはあった
岸はもしも柏田が殺されず、自分が海外へと移住をさせられていなければ本郷に戻ったはずです。
しかし自分の最終計画が失敗したために、みすずにも危険が及ぶと判断したのでしょう。
本郷に戻らなかったのは、みすずを見捨てた訳ではなく守るための行動なのです。
国家権力の象徴である父親に抗おうとした岸は、結局父親の権力によって押さえつけられたことになります。
メモを見つけたのは偶然ではない
戻ってくる気配のない岸を待つみすずが見つけたメモは、本当に偶然見つけたものだったのでしょうか。
岸が事前に仕込んでいたもの
いつも岸が読んでいたランボーの詩集から出てきたメモは、みすずにとって偶然見つけたものです。
しかしこの偶然は仕組まれていたのでしょう。
みすずに譲ったこの部屋に本を残していったということは、岸の仕組んだことだったのです。
三億円事件を完全犯罪とした男が、偶然本を忘れてしまうわけがありません。
岸は戻れないことを予期していた
すぐに見つからない場所に置いてあった、ということがポイントです。
メモは時間が経った頃にみすずが気付くような場所に置いてありました。