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スキューバー・ダイビング中のカップルが大海原にポツンと取り残されたらどうなるのか?
『オープンウォーター』はこのシンプルでいて深刻すぎる災難を真正面から描いた映画です。が単なる海洋パニック・ムービーというわけではありません。
そこには圧倒的なリアリティがあり、それに伴って深く考えさせるテーマも浮上してきます。
インディーズ映画の祭典・サンダンス映画祭でも喝采された『オープンウォーター』について詳しく解説してゆきます。
映画を引き立てたリアリティの要因
『オープンウォーター』はカップルの海洋遭難を鑑賞者の身に迫る形で描くことに成功しています。その圧倒的なリアリティについて考えてゆきます。
スーザンの自然なヌード
映画序盤において最もインパクトがあったのは、スーザンを演じたブランチャード・ライアンのヌードです。
ダニエルとダイビングに出る前の夜、2人はベッドで愛し合います。そこでスーザンは最初から全裸でベッドに横たわっています。
単なるサービスショットとも見れますが、これは映画全体のリアリティを上げる効果も放っています。
映画では恋人とベッドにいる女性がずっとシーツで体をおおっているようなことがよくあります。
そこで鑑賞者の多くは「ああ映画だなぁ」と感じ取ります。恋人同士であれば愛し合う際には裸で一緒にいることの方が自然だからです。
この映画序盤にスーザンが見せた自然なヌードで多くの鑑賞者はこのカップルをリアルに感じたはずです。
そしてそれは映画中盤から始まる外洋での漂流のリアリティにも通じています。ちなみに映画サイトIMDbにはおもしろいネタがあります。
クリス・ケンティス監督は漂流シーンに較べて序盤があまりに退屈だったため、スーザン役のライアンにヌードを頼んだそうです。
一方でライアンの実母は娘がサメのいる海の中でずっと撮影していたことよりも、映画でヌードになることの方が心配だったそうです。
短時間のライブドキュメンタリー構成
映画は中盤から終わりまで、ほぼずっとダイビングスーツ姿のスーザンとダニエルの漂流シーンだけを描いています。
それはライブドキュメンタリーのような現在進行に近い形であり、ここもリアリティを上げる効果をもたらします。
もちろん漂流シーンばかりでは単調になるリスクがあります。しかし、それに伴って多くの展開があります。
バラクーダに足をかまれたり仮眠中に2人がはぐれたりサメがやってきたりすることで、鑑賞者を退屈させないようにしています。
80分弱と短い上映時間も効果的です。映画を短くすることで2人の漂流シーンの全体的な割合が高まり、かつムダも少なくなります。
それによって鑑賞者は飽きることなく、カップルの漂流を身近に感じ続けることができるのです。
また漂流以降はほとんどBGMがなく、波や潮風などの自然音だけを使っているのもリアリティを高めさせています。
リアリティのより大きな要因
『オープンウォーター』が誇る圧倒的なリアリティの核心に迫る2つの要素を解説します。
多種多様な撮影方法
漂流のリアリティを大きく高めた最たる要因は、カップルに対する撮影方法の多種多様さにあります。
基本的には少し斜め上からの波に近い臨場感あふれる視点を使い、それに数多くのアングルを挿入しています。
スーザンとダニエルの主観、彼らを下からながめる魚たちの視点、そして中距離と長距離の俯瞰。
特にこの距離を置いたシーンは彼らの周辺海域に撮影カメラがないことを伝えるので、鑑賞者に対しよりリアルに2人を感じさせることができます。
ハードな環境での演技力と科学的な演出
漂流のリアリティを最も高めさせた要因は、やはり俳優2人の演技力です。
ブランチャード・ライアンとダニエル・トラヴィスは、合計120時間以上(5日間)もサメのいる海につかっての撮影に耐えたのです。
体力的にも精神的にも相当に大変だったことは容易に想像できます。