それが当時の大統領ジミー・カーターや、保守派で共和党のレーガンの支持も獲得した最大の理由でした。
ミルクの恋人ジャックは、何故「クローゼット」を選んだのか?
政治活動と裏腹のミルクの私生活の実情
市政執行委員に当選してからのミルクは、いち個人として恋人の側に寄り添っているだけでは居られなくなっていきました。
長年の恋人ジャックとも「選挙への挑戦は3回で辞める」と約束したにもかかわらず、ミルクが4度目の挑戦を始めた為に別れることになります。
4度目の選挙戦の頃からの支持者の一人で、恋人にもなったジャックは、全く政治活動には関心がありませんでした。
ミルクは以前にも増して多忙になっていきます。ジャックは自身の本音をミルクに伝えられず、クローゼットの中に隠れてミルクの気を引くぐらいしかできませんでした。
元々は天真爛漫に仕事に没頭するミルクの姿に惹かれていたジャックは、本心を告げることなく自らの命を絶ってしまいました。
この時の経験を、ミルクは誕生パーティの席上で、「それまで自分が付き合った相手は、4人中3人が自殺した」と参加者に伝えました。
「(付き合いは)命がけの戦いだ」と切実な言葉を残しています。
気さくな弱者の味方、ミルク
政治家としての素質の開花
ミルクは、本作には詳述されていませんが、若い頃から朝鮮戦争時の海軍に入隊していました。
ニューヨークに帰ってからも銀行員や、証券会社のディーラーとして、いわゆる普通の生活を営むのにすら四苦八苦していたのです。
自分自身がマイノリティとして受けてきた様々な経験が、カストロ・カメラの経営を通して見事に開花します。
更に周囲の人々が本当に求めていることを看破し実行に移していく、ミルクの類稀な行動力と天性のカリスマ性が徐々に磨かれていきます。
それが4度目の挑戦でのサンフランシスコ市政執行委員当選に繋がっていったのです。
72年のカストロ地区を蘇らせた撮影現場
9週間限定で復活したユリーカ・ヴァレー界隈
ガス・ヴァン・ザント監督と彼のスタッフは、実際のカストロ地区の17番通りから19番通りを約9週間の撮影中フルに貸切りました。
ミルクが経営し拠点にしていたカストロ・カメラがあった当時の周囲の街並みを約50件ほど完璧に再現したのです。
これは本作のエグゼクティブ・プロデューサーが、撮影当時のロサンゼルス市長と徹底的にコンタクトを密にとった成果でした。
街中だけでなく、市庁舎の中までも含めてどこでも撮影できるように環境を整えた努力が見事に結実したといえます。
徹底的にリアリティにこだわった制作
ミルクが実際に撮影協力したような高い再現性
ガス・ヴァン・ザント監督と主演のショーン・ペンは、撮影前に徹底的にリサーチを重ねました。
実際のミルクの旧友たちを撮影現場に招き、衣装決め等の重要な決定を下す段階で、できるだけ現場スタッフと深いディスカッションを交わせるようにリラックスできる環境を作ったのです。