その結果、ミルクの元スピーチライターや、近隣の住民等、所縁ある人たちが、本人役で撮影に参加する決定がスムーズに進みました。
スタッフの努力が結実した結果、建物だけではなく当時の雰囲気まで忠実に再現されるような撮影が実現しました。
また、撮影に参加したミルクの旧友たちはショーン・ペンの演技を、演技を始めた途端思わず息を呑む程、絶賛しました。
ショーンも、凄まじい努力でミルク自身の癖を自分のものにしていたのが伝わりますね!
ホワイトの凶行の根本原因に迫る
保守的な家柄故のジェラシーと逆恨み
サンフランシスコ市政執行委員でミルクの同僚だったダン・ホワイトは、もともと、保守的なキリスト教徒の家育ちでした。
ダンは、ミルクの天性といえる政治家または人間としての天真爛漫な「華」に対するジェラシーを強く感じていました。
また、ミルクが同性愛者である、ということに対する偏見も根強く彼の中にあったのです。
その為に、ダンはミルクが頭角を現していくことに強い脅威とストレスを感じていました。
表向きの犯行動機は、ミルクと強い協力体制を結んでいたサンフランシスコのモスコーニ市長に執行委員の辞意撤回を拒絶された事でした。
事実上ダン・ホワイト自身のミルクへの妬みが悪い形で結実してしまったことが、この凶行に繋がってしまったといえるでしょう。
その後彼は、偏見に満ちた裁判の結果、僅か5年後に出所します。ミルクの映画が公開された1984年の冬、自殺してしまいます。
いつの時代も、ほんの些細な誤解からトラブルは起こってしまうものですね…。
必見のドキュメント「ハーヴェイ・ミルク」
アカデミー賞受賞の迫真のドキュメント
1984年に制作された「ハーヴェイ・ミルク」は、本作を補完するような素晴らしいドキュメントです。
実際に残されたハーヴェイ・ミルクが当選してからの活動が本人へのインタビューと当時のニュース映像で、見事にまとめられています。
特にプロポジション6をめぐる反対運動、ミルクとカリフォルニア市長の暗殺から葬儀の時の街の様子は圧巻!の一言です!
本作を観て政治家としてのハーヴェイ・ミルクに更に興味が湧いた人には、必見の一本です。
歴史に「たら」「れば」は禁句とされていますが…
もし77年にミルクが死なずに政治活動を続けていて今のアメリカの現状を見たら、何を想い行動しただろうか?
この質問が出来ないことが、現代のアメリカ最大の損失の一つなのではないか、と今、様々な政治不信のニュースを視聴するたび痛感させられます。