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【ブルックリン】三原色が物語る主人公の心情を徹底分析!アメリカ人として帰国した彼女は母国の出稼ぎ労働者を見て何を思った?

ケリー自身もどうして自分の得にもならない意地悪をするのか理解していない様子でしたが、田舎の悪い面を見事に表現しています。

この時のケリーの服装は、緑のカーディガンに、灰色のスカート。

緑は「疲れ」「弱々しさ」を表し、灰色は「空虚」「孤独」を表す色で、孤独な疲れ果てた老人の底意地の悪さを感じさせます。

一方のエイリッシュは、白い服を重ね着することで「空虚」「薄情」「孤独」という意味を強調しています。

そして、ここでもニック・ホーンビィの脚本が光ります。

アメリカ行きを伝えた際にはケリーにいいようにやられたエイリッシュでしたが、ここではケリーを逆に威圧するほどでした。

アメリカ人として生きることの覚悟

エイリッシュはアメリカへ戻るための船の中で、これからアメリカで暮らしていこうとする少女に出会います。

オレンジ色のシングルボタンのコートの意味

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彼女が1年と数カ月前にそうであったように、不安に満ちた表情の少女に、温かくアドバイスを伝えます。

死ぬほど故郷が恋しくなるわ
でも何とか耐えるしかない
大丈夫 耐えられるから

いつか太陽が昇るわ
すぐには分からないけど 光が差すの

やがて自然と考えるようになる
新しく出会った人のことなんかを
あなただけが知る人

そして気づくわ
ここに人生があるとね

引用:ブルックリン/配給会社:フォックス・サーチライト・ピクチャーズ

この時のエイリッシュは、オレンジ色の薄いシングルボタンのコートを着ていますが、襟元までボタンを留めてはいません。

初めてアメリカに向かうときは、アイルランドのナショナル・カラーである緑色のコートを鎧の様に着込んでいたのはもう過去の話。

オレンジ色が持つカラーイメージは「家庭的」「親和」

エイリッシュはトニーとアメリカ人として、アメリカで暮らす覚悟をすでに決めたのです。

彼女は、これからアメリカでの生活に挑戦する女性を見て、過去の自分を思い、これからの自分に言い聞かせているのです。

「私の人生はアイルランドではなく、アメリカにあるのだ」と。

初めて海に行ったときと同じ衣装で

アメリカに戻り、トニーの仕事終わりを道の反対側で待つエイリッシュ。

大学の講義終わりにトニーが待ってくれていたのとは逆で、今度はエイリッシュがトニーを待っています。

ここで、あえて初めて海に行ったときと同じ衣装を着せているのには演出意図があると考えるのが自然です。

緑は「安らぎ」「調和」白は「幸福」「純粋」の意味でしたが、一周まわって愛の深さと覚悟が増していることを伝えているのでしょう。

まとめ

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今作のエンディングを現代の価値観で評価すると、「良い条件の男性を選ぼうなんて!」という声も聞こえてきそうです。

しかし、この物語の設定が今から70年近く前であることをふまえると、強く生きようとする女性の人生をみることができます。

現代の様に可能性に恵まれた世界ではなく、女性の「仕事」や「幸せ」の形は、より定型的な時代だったのです。

その世界の中で、エイリッシュは自らの努力で簿記の資格を取得し会計士を目指し、仕事を獲得し、異国で生きる道を模索したのです。

このような女性たちが、現代の女性の道を開き、可能性を与えてくれていること、そしてそれは現在も続く挑戦であるのです。

エイリッシュは私自身。