母親の言葉が絶対だったジャックは、やはり不幸な暮らしを送っていたのでしょうか。
幸せな時間
仕事や家事に追われ、我が子と向き合う時間がとれない。そんな母親が多いのが現実です。
そんな中、母親とずっと一緒にられるのは、子供にとって恵まれた環境といえるでしょう。
皮肉なことに、この監禁された母子においても、何にも邪魔されずに互いに向き合える時間があるのは幸せだったといえます。
母親の苦悩
幸せな暮らしを送っている息子に対して、母親はそれほどのんきなことは考えていません。
母親にとっては、外界にこそ本当の彼女の暮らしがあるのですから。
7年前に監禁され、犯人の子供を産まされたことに絶望を感じていないわけでは決してありません。
ただ、息子の存在だけが彼女の心の支えでした。望まずに生まれた子供であっても、自分の子供であることに間違いはありません。
息子が大きくなったことと、犯人とのトラブルが発端になって、その地獄のような監禁生活から脱出する決意をしたのです。
外の世界へ
母子が外の世界へ逃げ出すところからが、この映画の本当に描きたかった部分です。
外界へ出た2人の反応は真逆でした。
オールドニックによって外界から隔離された母親ジョイにとって、ルームは忘れたい場所でした。
監禁場所なのだから、脱出したいのは当たり前だろうと考えがちですが、息子ジャックにとっては嫌な場所ではありませんでした。
なぜなら息子ジャックにとって、ルームは世界の全てだったのですから。
自分が生まれ、大好きな母と暮らしたルームは幸せを象徴する場所なのです。
外界に出れば母親は解放されて幸せになれるはずでした。ですが、物事はそう単純にできているわけではないようです。
新世界に触れる息子ジャック
初めは、狭く閉ざされたルームから出るのを拒んでいた息子ですが、いざ外界に触れるとすぐさま順応していきます。
成長
母親ジョイが自殺未遂で病院へ運ばれた際、息子ジャックは大切な髪の毛を切って渡します。
ルームにいる間伸ばし続けていた髪を切ることは、彼が過去にとらわれずに生きる意志を表した証拠でした。
そして、母親以外懐くことのなかったジャックが、祖母に愛情を伝えるシーンは明らかにルーム時代と違う一面をみせています。
日に日に外界との良好な関係を築く息子ジャックとは相反して、母親ジョイは上手く適応できませんでした。
そしてここからが母親の本当の苦悩の始まりだったのです。
社会に戻る母親ジョイの苦悩
絶望のどん底といっても過言ではない監禁生活では、母親ジョイは自殺を図ることはありませんでした。