結果、彼の音楽は映画に実にフィットしたものになり、ゴールデン・グローブ賞の音楽賞にノミネートされたのでした。
61年物を開ける時
決断の時
ジャックが遊びで友人ステファニーに手を出したことを知ったマヤは黙っていたマイルスに激怒し、二人の間は決定的ともいうべき最悪の状態になります。
期待した小説の出版もダメになります。負け犬マイルスは負け犬のままなのでしょうか。
別れた妻との結婚10周年のためにとっておいた高価な「61年物のシュヴァル・ブラン」をバーガーショップのスチロール製コップでがぶ飲みする始末。
マヤからワインは開け時というものがあるのよ、といわれていたのに、その時を失ってしまったのでした。
そう、マイルスは大事なマヤとの恋を掴むチャンスを自ら失っていたのです。
ジャックの結婚式は無事に終わり式に出席した前の妻、彼女と再婚したダンナとも会い、妊娠もして幸せそうな前妻を見てさらに打ちひしがれるマイルス。
学校の授業も始まったものの笑顔が消えて冴えない日々を送っていました。マヤに手紙を出すのですが返事はありません。
そんなある日、勤めを終えて帰宅すると留守電が1件。マヤからでした。
彼がマヤに貸した小説の原稿の感想が語られていました。
マイルスの小説はとても切なくてステキだったとする一方、結末はよく分からなかった、でも書くことを諦めないでという内容でした。
彼女の偽りのない、しかし相手を傷つけない「ピノ・ノワール的」な本音は、そのワインのようにマイルスの胸に深く響くものでした。
マイルスはクルマを北に向け走らせ、マヤのもとに向かったのでした。
タイトル「サイドウェイ」の意味
原題は複数形で「SIDEWAYS」です。4人の「脇道」物語というほどの意味合いでしょう。ストレートに訳せば「横向きの」という感じです。
人生は一本道をまっすぐ歩くだけでは無い、いろんな脇道と出会い、それが自分で良いと思えばそれが目指す道となる、という意味と受け止められます。
ジャックと旅行に出かけたときは高速道路の脇道を何度となく降りたり乗ったりしたマイルス。
マヤの元に向かう時はまっすぐハイウェイを北に走ります。その時映画の中で初めて雨が降り出します。
クルマがハイウェイの一本の「脇道」に進むカットが敢えて映し出されます。マイルスはマヤの住む街へ、彼女のアパートへと駆けつけます。
マイルスはもう他の「脇道」の事を考える必要がなくなりました。。
どこかマイルスの心中を伺えてステキなシーンとなりました。もちろんラストカットのドアのノックも深い印象を残しています。
「ワイン」「脇道」「カリフォルニア」「ピノとカベルネ」「負け犬」そして「決断」、さまざまな要素がまるで複雑なワインの味のような「サイドウェイ」。
味わうたびに新しい発見がある作品です。