ミスターを滑稽なものとして、小馬鹿にすることだけが楽しみになっていたのかもしれません。
ミスターが移民局に出向いた心境とは?
ネティがアメリカに戻ってきたということを知らせる通知が移民局から届きました。
しかし、その通知が届いた頃にはセリーは家を出ており、ミスターが一人で暮らす元へと届いたのです。
荒れ果てた家で飲んだくれて暮らしていたミスターは移民局へ出向き、ネティ達をセリーの元へと導きます。
ミスターは傲慢で、自分勝手な王様のような性格でしたが、根っからの悪人というわけではありませんでした。
セリーやシャグ、子ども達もいなくなり、自分が誰からも愛されていないことに気が付いたのかもしれません。
自分がどれほど、最低なことをしていようが、文句も言うことなく、寄り添っていてくれたセリーを忘れる事はなかったのでしょう。
家のことも出来ないどころか、何がどこにあるかも全く分かりませんし、掃除をすることも出来ません。
自分が面倒を見てあげていると思っていたセリーに全て面倒を見てもらっていたことを実感します。
自分のせいで、人生をめちゃくちゃにしてしまったセリーに対する、ミスターなりの最初で最後の優しさと謝罪だったのかもしれません。
あらゆる差別に屈しないセリーの強さ
耐え抜いた日々と最後に掴む自由
小さい頃から、セリーが心から安心できる居場所はネティだけでした。
父親の子どもを出産したことで、母親はショックで亡くなってしまっていました。
父親に性的暴力をされた頃から、セリーは地獄のような日々を送り続けます。
妹だけは守らないといけないという姉の思いが強く、自分を犠牲にしてまでネティを守り抜きました。
しかし、人に貶されて育ってきたセリーは消極的で、自信のない女性だったのです。
辛く厳しい日々の中でも、セリーは人を傷つけたり、自暴自棄になることもなく粛々と暮らしていました。
黒人で、女性であるセリーはどこにも逃げる事さえできなかったのです。いま自分が置かれている環境を受け入れるしかありませんでした。
シャグはそんなセリーの心の美しさと今までの苦労を知り、セリーを連れ出してくれます。
何十年も耐えて、それでも一生懸命生きてきたセリーが報われたのでした。
1サイズのみのパンツ屋を開いたセリー
ミスターの元を離れたセリーは、パンツ屋さんを開きます。
この店にあるパンツは1サイズのみで、ソフィアが履くことができたものが、ハーポにもピッタリでした。
このパンツは男性でも女性でもピッタリに履くことができます。きっと、白人にも黒人にも似合うデザインなのです。
この1サイズのみというパンツは、人種や性別を超えてあらゆる人に愛されるでしょう。
辛い経験をしてきたからこそ、差別される垣根を壊したのではないでしょうか。
差別されてきた今までの環境を経ても、セリーは強く、人を愛することに徹していることが分かります。