出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B0088LBWK0/?tag=cinema-notes-22
【ノーカントリー】の舞台は1980年のアメリカのテキサス州西部です。
20年勤務した州保安官のベルは、最近になって自身の仕事の腕に自信がなくなり、元保安官の叔父に引退の相談をするほどでした。
ある日勃発した凄惨な麻薬取引の資金強奪事件に背を押されるように、ベルは引退を決断します。
退職した最初の晩、ベルが観た2つの夢に本作のテーマが凝縮されています。その夢が物語っていることを徹底的に読み解いていきます。
ベルの語る2つの夢の意味を徹底解釈!
保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は退職した翌朝、妻のロレッタ・ベル(テス・ハーパー)に2つ夢を見たと告白します。
最初の夢
ベルの父親は現在の彼より20歳若くして死に、夢ではベルが年上でした。
どこかの町で親父から金をもらい、それを無くした。
引用:ノーカントリー/配給会社:パラマウント,ショウゲート
ベルが父親からの期待に答えられなかったことの暗喩なのでしょうか?しかも、年齢もベルが夢の中では父親より歳上なのにもかかわらず。
二つ目の夢
2人で昔に戻ったような夢。ベルは馬に乗り夜中に山を越えた。
山道を通って行くが、寒くて、地面には雪が積もっていてー
親父はベルを追い抜き、何も言わず先に行った。体に毛布を巻きつけ、うなだれて進んで行く。
親父は手に火を持っていた。
昔のように牛の角に火を入れて中の火が透けた角は月のような色だった。
親父が先に行き闇と寒さの中、どこかで火を焚いていると。ベルが行く先に親父がいる。
引用:ノーカントリー/配給会社:パラマウント,ショウゲート
そこで目覚め「自分では面白かった」と妻に語るベルですが、心なしか保安官=命がけの激務から解放された安堵感が表情に出ていました。
ベルが志半ばで、20年勤続した保安官を辞職したためか父親はそれまでのベルの誘導灯としての役割を降り、黙って姿を消しました。
父親はこれから先もずっとベルの人生を、どこかで見守っているだろうという漠然とした確信を感じた、ということでしょうか?
シガーの異常な犯罪スキルの高さ
麻薬取引事件のあらまし
ベトナム帰還兵ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、鹿狩りに来た現場で事件に遭遇します。
麻薬取引が不調に終わったマフィアの死体を目撃し、現場に残された大金入りのアタッシュケースを偶然見つけます。
彼は金を持って自宅に戻り、逃亡の準備を始めました。
彼の殺害と金の奪還をマフィアから依頼されたのが、殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)でした。
シガーの殺人サイボーグ的な凄腕
麻薬密輸の金が入ったアタッシュケースに抜かりなく発信器を忍ばせ、ルウェリンの潜伏先のモーテルをあっさりと見つけます。
移動に使った盗難車を爆破して処分し、その間薬局で道具を調達し、的確な応急処置を自ら施したり…無駄がありません。
小憎らしい程冷静沈着で全てに手慣れている感覚が、ひしひしと伝わってきました。
射撃の腕も怖いほど正確です…。
2人を隔てる距離など問題にせず、車で逃走を図るドゥエリンが居る運転席からバックミラーから、容赦なく冷酷に発砲していきます。