大上の破天荒な行動の意図を日岡が知ったのは大上が失踪したタイミングだったのです。
彼が守ってきたものと厚い信頼にやっと気付くことができたのです。
大上を失った日岡は自分のすべきことを考えました。大上のように振る舞ったり、関係の構築をすることはできません。
抗争が始まってしまったからにはどうにかして日岡のやり方で止めなければなりませんでした。
少しずつ変化していた日岡の言動ですが、大上の死をきっかけに大きく動き出しました。
それほどまでに大上が周りに与えた影響が大きいものだったと実感したのでしょう。
大上を失った日岡は、大上に直接手をかけた人間や上で操っている人間を排除したのです。
人を殴ることさえしなかった日岡は撲殺する直前まで殴り続け、尾谷組の若頭に五十子の首を取らせて逮捕しました。
組織の上の人間を仕留めることが日岡の選んだ抗争を終わらせる方法だったのです。
大上の死が表わしていることとは
結果として日岡は瀧井の協力を仰ぎ2つの組を終わらせることに成功しましたが、上を抑えたところでまた下の者が台頭していくでしょう。
大上の死は今まで築き上げてきたものが終わり、秩序が乱れ抗争へと繋がりました。
大上の存在は呉原市の秩序のストッパーであり、彼の死はダムが決壊したかのように悪の感情を溢れださせるものでした。
何十年と大上は刑事二課の人間として暴力団と接してきていました。
どの組の上の人間とも顔見知りで手を出す・出されるといったことがあっても命を落とすことはありませんでした。
大上自身このまま働いているといつか命を落とすかもしれないと思いつつもこの歳まで死ぬことなく生きてきたのです。
もちろん大上が警察の人間であることだけで守られていたのかもしれませんが、そんな刑事の大上を殺害したことは異常な出来事だったのです。
思わず目を背けたくなるような死に様で胃の中から豚のフンが出てきたり、どこかに遺体を隠すこともなく海に捨てられていたのです。
これは五十子会から尾谷組、そして警察に対する宣戦布告でもあったのでしょう。
調子に乗ったことをすれば大上のように命を落とすことになるという警告も込められていたのかもしれません。
真に残虐非道なのは一体誰なのか
大上を邪魔だと退けようとした警察
大上のノートを執拗に欲しがっていたり、五十子の殺害現場から迷走した嵯峨のように警察は結局自分自身の保身を一番に考えています。
警察の人間は自分が大切で周りのことは二の次なのです。大上のように命を懸けて街を守るような人間は出てきません。
大上が殺害された際も酔っぱらって海に落ちたのだと表向きには話していました。
一生懸命に生きた人間さえも死んでしまえばこのような扱いをされるのです。
この映画の中での警察は不祥事はもみ消し、大上の命さえも軽く扱う残虐非道な存在であるのかもしれません。
五十子会との長期に渡る因縁
五十子会の金村が14年前に殺害されてから、大上と五十子はしばらく顔を合わせていませんでした。
実際には夫を金村に殺害された梨子が殺害してしまった金村でしたが、大上は梨子を守ったのです。