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【ホテルエルロワイヤル】は2018年のドリュー・ゴダード監督の最新作です。
時は1969年。エルロワイヤルを舞台に4組の宿泊客の人生が交差し、劇的にストーリーが展開していきます。
作品の背景となったアメリカの時代状況も踏まえ、幾つかのキーワード(盗撮ビデオ、戦闘シーン)についても解説します。
監督自ら「音楽へのラブレター」と評した拘りのサウンドトラックのトリヴィアについても語っていきます。
作品に埋め込まれたアメリカの時代背景を徹底考察!
1969年のロサンゼルス
当時のアメリカは参戦しているベトナム戦争が休戦の提案もなされるほど泥沼化した時期でした。
ストーリー中にも実際のニュース映像がインサートされますが、犯人が不明の猟奇的な殺人事件なども頻繁に起こっていました。
女優のシャロン・テートを惨殺したチャールズ・マンソンに代表される狂信的なカルト集団のコミューンもあちこちに出来ていました。
本作に登場するビリー・リーの言動もマンソンに影響されています。
アメリカの機密情報機関であるFBIは、大統領も一目置くような権力を誇ったフーバー長官をトップにスパイを潜入させていました。
ロシア(当時のソ連)にもKGBが存在しており、大国の機密情報機関が正に情報戦の上でも凌ぎを削っていた時期だったのです。
盗撮ビデオや戦闘シーンは何を表すのか?
エルロワイヤルは覗き見ホテルだった
ホテルは1966年の開業当初は大盛況でした。
1968年ギャンブルの認可を失い客足が激変。今や誰も客が居ない閑散とした状況になっていました。
盗撮されたビデオの中身は?
エルロワイヤルに宿泊した芸能界の大物スターの「常識を覆すような」スキャンダラスな映像が記録されていました。
支配人マイルズもホテルの上層部から指示された大物を盗撮し政治家が娼婦を連れ込んで羽目を外したり、重症の麻薬患者が部屋を滅茶苦茶にする様子を数えきれないほど観てきたと語っています。
69年前後のアメリカではハリウッド・スキャンダルが政争に利用されたり、極秘裏に写真やビデオが取引に使われていたのです。
エルロワイヤルとマイルズはそんな時代の余波の真っ只中にいた訳です。
支配人マイルズ・ミラーの裏の顔
彼はホテルに1人しか居ない支配人でした。
エミリーに流れ弾で自分の顔がひどく怪我をしているか訊くほど、ナルシスティックな気もある気弱な若者でした。
しかし彼はベトナム戦争に従軍し、123人を戦場で殺した凄腕の元帰還兵だったのです。
ラストシーンでのライフルさばきは戦場での彼の腕を納得させるような片鱗が見られました。
ベトナム戦争退役後の支配人の仕事も、人間の卑劣な面を無理矢理観せられるような酷いものでした。
初対面のフリン神父に告白したくなるほど精神的に追い詰められていたことは、ラストの大立ち回りの最大の原因だったのかもしれません。