実は…彼は、ホテルに隠した金を取りに来た根っからの窃盗犯でした。仲間と大金を奪って逃亡し15年の刑期を終えたばかりの!
チェックイン時から神父の格好をしていたのも、ダリーンに身の上話をした時前もって健忘症の話題を振ったのも、全部嘘でした。
他人から安易に声をかけられなくなるための周到な準備でした。神学より人を欺くことに長けてしまった「性」なのでしょう。
フリンを本物の神父と勘違いし、初めて自身の過去の罪を告白したマイルズにかけた言葉に込められた励ましの言葉だけは違いました。
罪を犯してしまった者同士のみ感じられる慈しみの気持ちが強烈に込められていました。
それゆえ、フリンはマイルズにとっては本物の神父たり得たのでしょう。
一番得をしたのは誰か?
ビリー・リーのダメさを立証したラスト20分
現実的にビリーの立場だったら金を奪いエミリーからローズを奪還しホテルに放火して逃走したほうが早い、と感じる人も居るかもしれません。
何故ビリーは全員参加の取り調べを始めたのか?
それは彼が自己顕示欲の奴隷だったからです。
それ故本当の戦場から生き延びてきたマイルズが本性を出した時、あっさり殺され金も姉妹も部下達も全てを失ったのでしょう。
ビリーが本当の意味での「リーダー」には程遠いクズだったことを自ら明らかにした後半20分!でした。
それぞれの事情を明らかにしエピソードを繋ぐには、このやり方しかなかったのでしょうが…
エンディングにもう一捻り波乱があったら。
タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に拮抗する出来になっていたかもしれません。
何年か後いい意味でのまさかのリメイクを期待したいですね。
いぶし銀のサウンドトラック
粋なオープニングとプレイリスト
本作はオープニングから監督の音楽へのこだわりがフルで発揮されていました。
フォー・プレップスの「26マイル」(1959年)とエドウィン・スターの「25マイル(1969年)で時の経過を表現したのです。
ホテルに設置してあるジュークボックスから曲が次々にオンエアされる手法も見事です。ダリーン自身が代役なしで歌うクロージング曲もハマっていました。
最近はApple MusicやSpotifyで、プレイリストが簡単に聴けるようになってきました。
本作にもサントラ収録済の13曲に使用曲をプラスしたコンプリート版プレイリストがUPされています。
映画を観ていてピンときたものから深堀りしていく時の絶好のガイドになっています。