彼らは実際にタイタニック号が沈むその瞬間まで演奏を続けていたのです。
音楽家としての誇り、そして強い精神と自制心、そして理知的であり極限状態に置かれた人間としてこうありたいという姿を体現しています。
映画の中でも極めて印象的なシーンの一つだと思いますが、これは実話だったのです。
バンドマスターのウォレス・ハートリーはタイタニック号と運命を共にしましたが、彼のバイオリンが現存します。
このバイオリンは彼の婚約者からプレゼントされたもので、ハートリーの遺体に結びつけられた状態で見つかりました。
その後婚約者のものとに返されたようですが時が経つ間に行方が分からなくなり、2006年になってイングランドの民家の屋根裏で発見されたのです。
このバイオリンはオークションにかけられ2013年に日本円で約1億4200万円で落札されました。収集家の元で今は安らぎの時を得ていることを願います。
たくさんの実在の人物や逸話が登場する映画「タイタニック」
映画「タイタニック」で描かれた実話エピソードはこのほかにもたくさんあります。
劇中で身分の低いジャックを応援し支えた存在、マーガレット・モリー・ブラウンも実在の女性です。
彼女は救命ボートに乗りましたが、救助のためにボートを引き返した勇気ある女性です。タイタニック号の生存者としてよく知られている存在でもあります。
船長やタイタニック号の設計主任、一等航海士などのタイタニック号で働く人々や一等客室の乗客なども多くが実在の人物がベースになっています。
劇中には登場しないのでこれは余談ですが、日本人で唯一タイタニック号に乗船し生還した細野正文はミュージシャン、細野晴臣の祖父に当たる方です。
タイタニック号は今
タイタニック号は現在も北大西洋の海の中に眠り続けています。
沈没から200年以上が経ちかなり腐食が進んだ状態になっており、専門家は将来的にはバクテリアに分解され、なくなってしまうだろうと予測しています。
いずれは永遠に失われてしまうタイタニック号。
タイタニック号が辿った運命は芸術家たちを刺激し、タイタニック号をモチーフにした作品はたくさん登場しています。
この映画「タイタニック」も多くの人にタイタニック号の悲劇を伝えるとともに、残酷な事態に陥っても失われない人間の愛や尊厳を描き出しました。
恋愛映画、パニック映画として見られることもある「タイタニック」ですが、実際にこういった悲劇があったこと、そして残酷な運命にあっても誇り高かった人たちのことを今に伝える映画でもあるのではないでしょうか。