出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07Z65S7JG/cinema-notes-22
2019年に公開された「命みじかし、恋せよ乙女」は名女優・樹木希林の遺作です。
ドイツ人映画監督であるドーリス・デリエの映画「HANAMI」の続編である本作は、ドイツのみならず日本を舞台としていました。
そのため本作は、演出と相成って美しいドイツの街並みと見慣れた日本の風景が入り混じる幻想的な雰囲気を漂わせています。
アルコールに溺れる主人公・カールと謎の日本人女性・ユウが出会いはじまる物語。
ユウ役の入月絢は、ドイツを拠点に活動するダンサーです。
物語の中でカールに付きまとう黒い影は何だったのでしょうか?
そもそもその幻影が見えるのは何故だったのか。ユウは最初から死んでいたのかのという疑問と合わせて考察します。
カールに付きまとう黒い影の正体とは
カールに付きまとう黒い影の正体とは何だったのでしょうか。
アルコールの誘惑
作中で陰に怯えるカールに、ユウは「悪霊よ」と答えました。
漠然とした言葉に聞こえますが、カールが重度のアルコール依存症であることがその正体の手掛かりになります。
黒い影の正体は、アルコールの誘惑そのもの。
カール自身を壊したのみでなく、カールの家族をも崩壊させたまさに悪霊です。
根拠となる場面
この説の根拠となるのは、カールが茅々崎館で過ごす夜に隠されています。
日本酒を飲んでいたカールの前に、またも黒い影が現れました。怯えて酒を口にするカールですが、それを窓から捨てます。
黒い影にお茶を飲ませると、影は倒れました。
この場面の直後、カールの表情は何かから解放されたかのようにすっきりとしています。
これはカールがアルコールの誘惑を自分の力で断ち切ったことを意味して、カールの意志が勝ったということ。
また、日本に来たことでカールの精神が正常になりつつあることも意味しています。
他にも考えられる黒い影の正体
アルコールの誘惑が正体と考えられる黒い影ですが、他にも正体と考えられるものはあります。
それは、アルコールも含めたカールが恐れているもの全て。
ユウと一緒に過ごしていると、突然黒い影のような恰好をした集団が二人の前に現れました。それが何なのかカールは知っているようです。
恐らく地元に残る因習のたぐいだと考えられますが、カールは明らかに彼らを苦手としていました。
怪我を負わされたカールですが、彼らが凶暴な殺人鬼などではないのは二人が無事なことから明らかです。