一方で脚本に目を通し、上記のように海軍として見逃せないシーンについては口も出したとされているのです。
こんなシーンがありました
監督とプロデューサーの豪腕が生んだ珍シーン
軍事アドバイザーや海軍からの指摘も無視した監督の「暴走」ともいえるようなシーンも相次ぎました。
思い込んだら譲らないトニー・スコット監督と支えたドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーの強引な手法が通ってしまったのです。
例えを挙げれば、格納庫で行われるチャーリーの講義シーン。実際はちゃんとした教室で行われます。
チャーリーの講義シーンでも製作側はもっと色気を出したかったのですが、これは海軍から強いダメ出しをくらってしまったとか。
監督は海軍や製作・配給側からの口出しに対し、相当突っぱねたようです。しかし、こんな事が起きました。
ラッシュフィルムのスクリーニングでラブシーンが少ない、という指摘を受けた結果台本が書き換えられます。
まずエレベーターの中でのイチャイチャシーンが挿入され、更にチャーリーとピートのベッドシーンが急遽追加設定されたのです。
監督の思いつきでその場で台本が急遽書き直されることもあったそうですが、まあ、これは多くの映画である出来事です。
軍事専門的に指摘された「ミス」
敵機とキャノピーの位置を同じにして背面飛行を敵機と数十センチの距離で行い、ポラロイドを撮るシーン。
ジェット後流に巻き込まれたグースが射出されたキャノピーに頭をぶつけて死亡するシーン。
引用:トップ・ガン/配給会社:UIP
こうした事はありえないという指摘があります。
インド洋の戦闘にて北朝鮮か中国を思わせる敵機と戦うのですが、当時のMiGはそこまで飛んで来れないという指摘もあったりします。
仮想敵国には空母が無かった時期だからなのです。
同一機なのにカットによって機体番号が違う、ロックオン時の音が実際と異なる、操縦桿の引き方がおかしいなどなど。
空中戦シーンでの間違いの指摘が多いようです。
アメリカの映画批評サイト“IMDb”の「トップ・ガン」の「間違い指摘(Goofs)」のページには、162もの投稿があります。
引用:https://www.imdb.com/title/tt0092099/goofs/?tab=gf&ref_ref_=tt_trv_gf
しかしこれらは軍事愛好家でもなければ本編にはあまり関係ないことでしょう。ちなみにMiG28という戦闘機は架空のものです。
大ヒットの要因は
トニーもジェリーもCM出身者
本作の映像的な成功は、極めてCM的な制作法を取ったことによるものが大きいのです。
それは冒頭の最初の出撃シーンに表れます。
トニー・スコット監督の特徴なのですが、カットの長短の使い方がCM出身者だけあって極めて巧み。
まず冒頭の監督の大好きなオレンジ色に染まった航空母艦甲板の戦闘機の上では、長いカットも入れ情緒的に描いていきます。
そしていざ戦闘機発艦となると、次第に短いカットを積み重ねてスピード感と緊張感を演出していくのです。
さらに艦上作業員の挿入の仕方やアップとロングの切り替えもCM的でお洒落な画作りとなるわけです。
バックで流れてくる音楽の盛り上げ方もCM的で巧みでプロモーションVTRのようだといわれる所以でしょう。
これはどんなシークエンスでも共通することなのです。
特に空中戦では
特にドッグファイトと呼ばれる激しい空中戦のシーンでは極めて短いカットを重ね、緊張感を演出します。
CGを使わないジェット戦闘機の空中戦シーンでは、「トップ・ガン」を上回る作品はない、とまでいわれる名演出。
もちろん海軍協力による素晴らしい映像(カット)も非常に効果的に使われています。
またトム・クルーズが操縦する海軍のF-14トムキャットは「可変翼」を備えた2座の艦上戦闘機。