自分の価値観も親や学校・社会から学んでいるわけですから自分で作り上げたものとはいい切れません。
結局は他人が考え出したルールに囲まれて生きているのです。
そう考えるとトゥルーマンの置かれている環境はあり得ないと断言することはできるのでしょうか。
何の疑いも持たずにそのルールの中で生活している私たちは、自らの限界を自分で設定しているに過ぎません。
トゥルーマンがクリストフの創り上げた世界から飛び出そうとする時様々なアクシデントに襲われました。
これを私たちの社会に置き換えてみると、常識や思い込み、他人からの妬み、プライドに該当するでしょう。
「お前には無理だ」「非常識」などと周りから否定されることは間違いありません。
それに加えて「自分にできるのだろうか」という不安もつきまとうはずです。大多数の人はこのアクシデントで諦めてしまいます。
だからこそ命懸けで外の世界へ飛び出すトゥルーマンの姿に私達は胸を打たれるのです。
キリスト教の要素
トゥルーマンとクリストフ。2人の関係性からキリスト教的要素が強く感じとれます。
創造主であり父
シーヘブンという架空の島を作り上げ、トゥルーマンや俳優たちを意のままに操るクリストフはまさに創造主「神」。
クリストフがこの世界の生みの親であり、彼の全ての愛情がトゥルーマンに注がれていました。
クリストフがトゥルーマンを見るときの父親のような表情からも、その愛情の深さが伝わってきます。
ただ人間のリアルな生活を放送したいだけなら、親子のような設定は不要なはずです。
その設定をした理由はトゥルーマンを神の子「イエス」に重ね合わせたかったからでしょう。
トゥルーマンとイエスキリストの共通点
トゥルーマンは父親を海の事故で亡くしています。
その父親さえも俳優なわけですが、本当の父親が誰だか分からないところもイエスとの共通点の1つです。
イエスは聖母マリアの処女懐妊によって生まれた子で、父親は神です。
人間の父親がいないという点がトゥルーマンの人物設定に合致していると考えられます。
またイエスが宣教のために旅をし始めたのは30歳の時。ドームの中に30年間閉じ込められていたトゥルーマンと同じです。
トゥルーマンのその後
トゥルーマンとイエスを重ね合わせたと解釈すると、外の世界に飛び出したトゥルーマンのその後が想像しやすくなります。
30歳で洗礼を受け宣教の旅に出たイエスは、人々に「愛」を教えました。神を愛し、隣人を愛することを説いたのです。
それを踏まえるとトゥルーマンも世界各地へ足を運び、多くの人に愛について語ってまわったのではないでしょうか。
自分だけ真実を知らされず、人生を見世物にされたトゥルーマンは最後まで誰のことも責めませんでした。
クリストフや親友・妻に怒りをぶつけて当然なのですが、いつもの挨拶で締めくくった彼の心には愛が広がっていたはずです。