出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00ZO8UPDU/?tag=cinema-notes-22
2013年にジョン・カーニー監督の下で音楽映画として製作・公開された映画『はじまりの歌』。
主演はキーラ・ナイトレイにマーク・ラファロ、更にマルーン5のアダム・レヴィーンとかなりの豪華キャストです。
音楽をテーマにグレタとダン、そしてデイヴの三者を中心としたニューヨークでの心温まる物語を描いています。
作品は勿論音楽が何より素晴らしく、劇中歌『Lost Stars』は以下にノミネートされました。
第87回アカデミー賞歌曲賞
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/はじまりのうた_(映画)
本稿では失恋を引きずったままイギリスからやって来たグレタの音楽をネタバレ込みで解説していきます。
また、彼女が契約をやめて配信で歌を広めた真意や留守電にあった曲に込められた思いなども見ていきましょう。
“仕事”とは何か?
本作の大きな特徴はグレタとダン、そしてデイヴの三者を通して“仕事”とは何か?を考えさせる物語です。
物語自体は音楽を題材に、グレタが挫折や失敗を経験しながら大成していくという割とオーソドックスなもの。
しかし、だからといって安易な恋物語でもなければ反骨精神でのし上がっていく根性ものでもありません。
また、グレタとダンはお互いに挫折や失敗を経験した痛みを分かち合いますが傷の舐め合いはしないのです。
彼女達はそれぞれにあくまで自分達が作りたい音楽を仕事にしていく、それ自体が凄く有意義なドラマとなります。
だからこそ一見王道に沿いながらも核の部分で新しい仕事に対するスタンスやアプローチが見所なのです。
グレタの音楽
さて、本作最大の特徴は何よりも主人公グレタが花を咲かせ大成させた音楽でしょう。
アカデミー賞にノミネートされる程の彼女の音楽は果たしてどこが面白かったのでしょうか?
あらすじや彼女の辿ってきた人生なども振り返りながら見ていきましょう。
一人ではなく二人
まず一番の特徴はグレタの音楽は自分の音楽というより自分の大切な人との関わりの中で作る曲です。
物語冒頭では恋人のデイヴと二人で作ったものでしたし、デイヴに浮気されてからはダンと作っています。
これはグレタの人柄とも被りますが、彼女は単独ではなく恋人やパートナーの存在で魅力が増すタイプです。
だからシンガーソングライターでありながら一人ではなく二人で作っているというやや特殊な形になります。
だからグレタ自身はオリジナリティといえる程固有の作家性は持っていないのかも知れません。
日常を音楽にする
二つ目の大きな特徴は日常を音楽にする、即ちニューヨークの街中から聞こえる雑音や喧噪を取り入れることです。
これが後述する配信で歌を広めた真意にも繋がるのですが、グレタの音楽は周りにあるもの全てを取り入れます。
その為に友人や学生、更にはダンの娘まで巻き込んでストリートレコーディングまで行っているのです。
これはグレタの大事にする音楽が聞いてくれる誰かや一緒に作る誰かがいて初めて成立するものだからでしょう。
大体のアーティストや音楽家は自身の内面から滲み出る作家性を音楽に昇華して勝負するものですがグレタはこの逆。
あらゆる雑音ですらも自分のものとして吸収し、自分一人では無理な音楽をダンと共に次々と生み出すのです。
全く受けなかった弾き語り
その証拠に一人の歌はヒットしていないことを示すのが小さなバーでの弾き語りのシーンです。
彼女はこの時デイヴに浮気されたショックから悲しい面持ちで曲を弾きますがこれが全く受けませんでした。