ノエルが勘違いしたのも無理はなく、「トレインスポッティング」の本来の意味は「鉄道マニア」です。
本来の意味
「スポッティング」は辞書によると「見つける」という意味があります。そこから「観察」という意味が生じました。
「トレインスポッティング」と聞くと、海外の人は線路の脇でお目当ての電車が来るのを待っているマニアな人々を連想するようです。
しかし「鉄道マニア」という意味のタイトルではありますが、映画に鉄道マニアはでてきません。
レントンの部屋のポスターが電車ではありますし、大自然を感じるために山地に行った時に駅に降り立ったシーンはあります。
しかしポスターには特に意味はなく、駅に降り立ったシーンはビートルズのアルバムの裏ジャケットのオマージュです。
映画の意味
原作の小説を書いたアーヴィン・ウェルシュによると、「トレインスポッティング」とはスコットランドのある特定の地域の隠語だそうです。
スコットランドのある地方に廃線になった鉄道車庫があり、その停車場にいつしか薬物中毒者たちが集まるようになりました。
そこで薬の売買や摂取を行うようになり、そこで薬をキメることを「トレインスポッティングする」などと言うようになりました。
原作者はそこからとって「トレインスポッティング」と名付けたのですね。
また、薬物を摂取すると、視界に斑点が連なり列車のように目の前を通り過ぎていく現象があるそうです。
このように、「トレインスポッティング」という映画のタイトルは「薬物常習者」を意味しているのです。
薬物と青春の化学反応
現実から逃避し破壊的な生活を送る青年たち。これだけ書くと陰鬱な印象を抱きますが、この映画からはそういうものを感じません。
観客は最初トイレの便器に身体を捻じ込むような不快感を感じますが、トイレの狭い配管を突き抜けると逆に爽快感すら感じるようになるのです。
破滅に向けて突っ走っていたレントンが急ブレーキを踏み、まっとうな人生を歩み出したと思ったらまた沼に引きずり込まれる。
しかし、最後には青春に別れを告げて、狭いスコットランドと破天荒な友人たちに見切りをつけて出ていきます。
レントンは家族や出世・大型テレビがあるまっとうな人生に向けて走り出すのです。
最初は否定していたものを手に入れるために、現実に立ち向かうために生きようとするレントンの姿は、希望と未来を感じさせます。
沈んでいた泥沼から抜け出したレントンに勇気づけられた若者がたくさんいたでしょう。
映画公開当時若者だった人たちは、今では立派な大人になっています。
大型テレビや洗濯機・車などを手に入れ、家族や仕事などの現実に取り囲まれて暮らしているかもしれません。
そんな人たちにも、レントンたちのように無軌道で破滅的で刹那的だった時期があったのです。
レントンたちに共鳴し共感した若者たちはこぞってこの映画を観に行きました。
この映画の大ヒットは、そのことを物語っています。