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【トレインスポッティング】底辺の青年を描いた映画がヒットした訳を解説!タイトルの意味は?レントンは本当にトイレに落ちた?

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1996年に公開された『トレインスポッティング』はスコットランドが舞台の映画です。

有名な俳優を使わず低予算で作られた映画でしたが、英国のみならず米国や日本でもヒットしました。

映画の題材はヘロインや犯罪など、一見すると大衆受けするものではありません。

なぜ『トレインスポッティング』が世界でヒットしたのか理由を解説していきましょう。

テンポの良さと斬新な映像

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この映画はいきなりレントンとスパッドが全力疾走しているシーンから始まります。

この冒頭が象徴するように、この映画に出てくる若者たちは最初から最後まで追いかけてくるものから必死で逃げています。

その追いかけてくるものとは、レントンがモノローグで語るように、家族や出世・大型テレビなどの現実、つまり人生なのです。

追いかけてくるものから逃げるために、若者たちはさまざまな手段を用いました。

その手段はヘロインを筆頭に暴力・セックス、ショーン・コネリーのマニアになるなど多岐に渡ります。

レントンはヘロイン、ベグビーは暴力、トミーはセックス、シック・ボーイはショーン・コネリーに逃げ込んでいます。

善良だけれど鈍いスパッドはそんな仲間に振り回されるばかりです。

まっとうな人生から全力で逃げる若者を描いたのがこの映画だといえるでしょう。

この映画のヒットは、1996年にスコットランドの若者たちが抱えていた閉塞感に、米国や日本の若者が共鳴したということです。

強烈な身体感覚

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この映画は露悪的といえるまでに下品な代物をまざまざと描いています。それが観ている私たちに身体感覚を伴って突き刺さるのです。

衝撃のトイレシーン

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映画が始まって10分もしないうちに主人公の露骨な排泄シーンが映し出された映画がこれまでに存在したでしょうか?

レントンが便器に身体を突っ込むシーンは観ているこちらまで吐き気を催すほどの強烈なシーンでした。

ちなみにここで使われていた茶色いものはチョコレートです。撮影現場はチョコレートの甘い香りでいっぱいだったそうですよ。

しかしマクレガーの渾身の演技のおかげで観ているこちらまで気持ち悪くなってしまうほどの映像でした。

撮影現場で役者たちは映画そのままに飲んだくれていたそうで、いつも二日酔いで撮影に臨んでいたとのこと。

たしかにレントンはいつも気分が悪そうにゲップをしていますし顔も真っ青です。

いろんな意味で非常にリアルな映画だといえます。

悪夢の朝食シーン

スパッドがガールフレンドの家で下痢を漏らしそれをぶちまけたシーンは目を背けたいほどのリアルなものでした。

イギリスの伝統的なブレックファーストをぶち壊す悪夢のような例のシーンはなかなか忘れられそうにありません。

以上に挙げたシーン以外にも、露骨で露悪的なシーンが満載なのが『トレインスポッティング』です。

排泄物や吐瀉物、血や汗、二日酔いの吐き気、そして薬物のもたらす快感……。それらが必要以上にリアルに感じられます。

この映画が喚起する強烈な身体感覚は、ぬるい現実に倦んだ若者たちに刺激を与えたといえるでしょう。

薬物のリアル

大きな写真「トレイン・スポッティング」ユアン・マクレガー

レントンはスコットランドで一番汚いトイレで排泄し、座薬のアヘンを探すために便器に身体を突っ込みます。

開始早々、観客は何がなんだかわからなくなります。

レントンは禁ヤクをすると宣言した矢先に薬を手に入れ、それを尻に入れ、それをトイレに落とし、そこに飛び込む。

こうした目が回るような展開の速さと支離滅裂さに戸惑いますが、これが薬物中毒者のリアルなのでしょう。

中毒者の衝動

レントンの無軌道さは、薬を手に入れるためなら何でもする中毒者のそれを表しているのです。

レントンは便器から落ちた先で薬を見つけます。澄んだ水、石が転がる海底、そして光る大きな座薬は明らかに現実ではありません。

便器も人が通れるほどの大きさではないので、レントンがトイレに落ちることは現実では不可能なのです。

現実と幻覚の境界

直輸入、大きな写真「トレイン・スポッティング」ユアン・マクレガー

しかし現実ではないにも関わらず、それが幻覚であると説明する描写は特になく、レントンはびしょ濡れで家に帰りました。

水に飛び込んだかのように頭から足の先までびしょ濡れなので、レントンがトイレに落ちたのが本当かそうでないかわからなくなります。

このシーンを見るとわかるように、この映画では現実と幻覚の区別が限りなく曖昧なのです。

薬物中毒者にとって、現実と幻覚は地続きであり、見分けがつかないものであることがよくわかります。

ファッションと音楽

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1996年の若者はこの映画のファッションや音楽にも熱狂しました。

気取らないファッション

レントンは身体にぴったりとフィットするTシャツとボトムを着ています。

この映画に出た頃、まだ無名だったユアン・マクレガーは役作りのために10キロ以上体重を落としたそうです。

タイトなシルエットのファッションが、退廃した若者の生活をより刹那的かつ魅力的にしていました。

イギリスの音楽

また、冒頭を飾るイギー・ポップの歌を筆頭に、イギリスの若者向けの音楽が全編通して使われています。

映画で扱われたのは若者向けブリット・ポップだけではありません。

至るところにビートルズへのリスペクトが感じられるシーンがありました。

たまり場になっている部屋の壁には「Mother Superior’s」と書かれていますが、これはビートルズの曲からきています。

他にも薬の取引に向かう仲間たちが横断歩道を横切るシーンはアルバム「アビー・ロード」のジャケットを連想させます。

あのオアシスにも楽曲提供のオファーがあったそうですが、ノエル・ギャラガーがタイトルから「鉄道マニア」の映画だと勘違いしたため実現しませんでした。

しかしリアム・ギャラガーは『トレインスポッティング』がお気に入りの映画だと公言しています。

オアシスは映画のプレミアパーティに出席するなどこの映画に対して好意を示しています。

タイトルの意味

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先ほどノエル・ギャラガーが映画のタイトルの意味を勘違いして楽曲提供を断ったと書きました。

ノエルが勘違いしたのも無理はなく、「トレインスポッティング」の本来の意味は「鉄道マニア」です。

本来の意味

「スポッティング」は辞書によると「見つける」という意味があります。そこから「観察」という意味が生じました。

「トレインスポッティング」と聞くと、海外の人は線路の脇でお目当ての電車が来るのを待っているマニアな人々を連想するようです。

しかし「鉄道マニア」という意味のタイトルではありますが、映画に鉄道マニアはでてきません。

レントンの部屋のポスターが電車ではありますし、大自然を感じるために山地に行った時に駅に降り立ったシーンはあります。

しかしポスターには特に意味はなく、駅に降り立ったシーンはビートルズのアルバムの裏ジャケットのオマージュです。

映画の意味

原作の小説を書いたアーヴィン・ウェルシュによると、「トレインスポッティング」とはスコットランドのある特定の地域の隠語だそうです。

スコットランドのある地方に廃線になった鉄道車庫があり、その停車場にいつしか薬物中毒者たちが集まるようになりました。

そこで薬の売買や摂取を行うようになり、そこで薬をキメることを「トレインスポッティングする」などと言うようになりました。

原作者はそこからとって「トレインスポッティング」と名付けたのですね。

また、薬物を摂取すると、視界に斑点が連なり列車のように目の前を通り過ぎていく現象があるそうです。

このように、「トレインスポッティング」という映画のタイトルは「薬物常習者」を意味しているのです。

薬物と青春の化学反応

大きな写真「トレインスポッティング」ユアン・マクレガー

現実から逃避し破壊的な生活を送る青年たち。これだけ書くと陰鬱な印象を抱きますが、この映画からはそういうものを感じません。

観客は最初トイレの便器に身体を捻じ込むような不快感を感じますが、トイレの狭い配管を突き抜けると逆に爽快感すら感じるようになるのです。

破滅に向けて突っ走っていたレントンが急ブレーキを踏み、まっとうな人生を歩み出したと思ったらまた沼に引きずり込まれる。

しかし、最後には青春に別れを告げて、狭いスコットランドと破天荒な友人たちに見切りをつけて出ていきます。

レントンは家族や出世・大型テレビがあるまっとうな人生に向けて走り出すのです。

最初は否定していたものを手に入れるために、現実に立ち向かうために生きようとするレントンの姿は、希望と未来を感じさせます。

沈んでいた泥沼から抜け出したレントンに勇気づけられた若者がたくさんいたでしょう。

映画公開当時若者だった人たちは、今では立派な大人になっています。

大型テレビや洗濯機・車などを手に入れ、家族や仕事などの現実に取り囲まれて暮らしているかもしれません。

そんな人たちにも、レントンたちのように無軌道で破滅的で刹那的だった時期があったのです。

レントンたちに共鳴し共感した若者たちはこぞってこの映画を観に行きました。

この映画の大ヒットは、そのことを物語っています。