さらにダンブルドアが賢者の石を隠す場所の候補がどこなのか考えてみても、ホグワーツに来るのがベストだという結論に至ったのです。
総合すると、クィレルとヴォルデモートの出会いから全て、ヴォルデモート側の策略であった可能性が高いといえます。
自分を滅ぼしたハリーが入学してくる時期を考えると、ハリーの近くで殺す機会を窺うのにも最適だと考えたのでしょう。
「悪」としてのヴォルデモートの存在感
ハリーポッターという物語のなかで、ヴォルデモートは名前を口に出すこともはばかられるほどの悪人として描かれています。
半純血のものやマグルを排除した世界の構築を目論み、若い頃からホグワーツの教師を誑しこめるほどの才覚を持っていた人物です。
加えて、自分より劣っている人間は従属するべきだと考えていて、機嫌ひとつで部下を殺してしまうほどの冷酷さを持ち合わせています。
これは、愛を知らぬ人間の末路が最悪の形として描かれている、物語のなかでも同情の余地のないタイプの悪役です。
クィレルに取り憑く際にも、クィレルは単なる「容器」にすぎず、特に何も感じていなかったのでしょう。
クィレルが灰になって消滅したのはなぜか
クィレルはラストシーンでハリーに触られるだけで灰になって消滅するという最後を迎えます。
なぜこんなことになったのか分からない方も多かったことでしょう。
作者の意図を考察すると、その理由が見えてきます。
愛の力の表現
クィレルが灰になった理由として、ハリーの中にある母リリーのかけた「愛の護り」という魔法が挙げられます。
リリーは自分が死ぬ代わりに闇の魔法がハリーにかからないように仕向け、息子を守ったのです。
守る、というと受け身ですが、闇の魔法を灰にするという攻撃もできるパワーがあります。
ヴォルデモートは分霊箱で生き延びており、乗っ取られているクィレル自身はともすれば存在が闇の魔法です。
だからこそ灰になって死んだのでしょう。
ハリーポッターシリーズ、そして続編のファンタスティックビーストのシリーズでも普遍的に描かれている絶対的なテーマは「母の愛」と「子供の闇」。
常にハリーを守らんとするリリーの愛が、物語の随所に散りばめられています。
逆に、子供の頃に愛を知り得ず育った結果、世界をどん底に突き落とすほどの闇と悪に成長するのだということも描いています。
それほどまでに、子供の心の孤独や闇は危険なのだということです。
こういった点を踏まえると、愛の魔法により悪を滅ぼすという構図は実に納得いくものだと感じます。
続編に対する伏線
そしてもう1つ考えられるのは、「伏線」という見方です。
目に見えない魔法によって存在していたクィレルとヴォルデモート。
死してもなお不可思議な存在であることを誇示しているかのようでもあります。
肉体が灰となったクィレル。その中にいたヴォルデモートは死んだのか?