ただ人種・性格の全く異なるため初めのうちはお互いが距離を置き、関わることを避けているように描かれていました。
潜在的な問題とは
内包した問題
根本的な問題は根付いてしまった黒人に対しての差別意識です。
本作でドン・シャーリーが行ったアメリカ南部へのコンサート・ツアーで受けた扱いを観て自分たちがどう感じたかが重要になってくるのではないでしょうか。
当時のような差別は目立たなくなりましたが、大なり小なり差別は起きています。
「グリーンブック」の作中では白人のほとんどが黒人差別に対して盲目であり当たり前として認識しています。
本作は自分たちが当たり前だと思っている考えに疑問を持つことも大切だと伝えているのではないでしょうか。
朱も交われば赤くなる
刺激し合う二人
トニー・ヴァレロンガとドン・シャーリーは8週間にもおよぶ旅の中でお互いに親交を深め、最後には自分の中にある差別意識を払しょくし本当の意味で友人になりました。
そこに至るまでには旅の中でお互いに少しずつ影響し合い、偏見や考え方を変化させていくことが必要です。
たとえば作中でトニーが強引にドンへフライドチキンを渡すシーンがあります。黒人は全員が食べている、という偏見でした。
ただ、これに対してドンも食べたことがないにも関わらず断り続けます。
最終的にはトニーの強引さに押し負けてフライドチキンを食べ、そのおいしさに気づきます。
ここではお互いが抱いていた偏見がぶつかり、考え方が変化したシーンなのではないだろうか。
実話だからこそ
「グリーンブック」は実話であるからこそ、当時を演出する表現や立場が生々しく描かれています。
ドン・シャーリーが抱える苦悩や信念、トニー・ヴァレロンガの偏見や差別意識の変化は観ている側に問いかけているように思いました。
たとえばドン・シャーリーはツアー中、行く先々で不遇な扱いを受けるが一歩も引くことなく真っ向から対峙します。
そこには自分が貫こうとしている信念があることが伝わってきました。
また孤独であることに苦悩している一面もあり、より自分のあるべき姿というものを強く持っていることが伝わってきます。
同じようにトニー・ヴァレロンガも黒人に対しての偏見や差別意識があることに気づき、ドン・シャーリーと関わることで変化していきます。
大きく変化を見せたのはトニーが家族に宛てた手紙を書いているとき、ドンが述べた意見に素直に従った場面です。
最初の頃であれば、自分のやることに口を出してくることに反論してきそうなシーンだったのですが、文句を言わずに受け入れています。
これはトニーがドンに対してある程度の友情を抱き始めていたからではないだろうか。