亡くした父親の事を想う美波子と家族である蘭や小五郎の存在を大切に想う英理。家族思いという点でも二人は似ているのです。
しかし美波子はその思いの深さゆえに最大の過ちを犯してしまいました。
二人の立場が逆だったら
殺人犯である美波子と、かたや正義を追及する弁護士という英理は正反対の境遇にあります。
立ち位置が違えば二人の人生が逆のものになっていたという事も考えられるのです。
家族思いという最大の共通点から、英理の方も蘭や小五郎を理不尽な理由で亡くしていたら、美波子のような殺人犯になっていたかもしれません。
一方で美波子も父親が健在であれば殺人など犯さず、英理のように正義感溢れる幸せな人生を送っていた可能性は十分にあるのです。
“幸と不幸”というものはいつも表裏一体。
置かれた境遇によって、似ている二人は全く別の人生を送ってしまいました。
“愛情深い”という最大の共通点がありながら、人間というものは些細なボタンの掛け違いで逆の立場になる事も有り得るのです。
コナンの推理ミス
いつも難事件をその明晰な頭脳と行動力で解決に導いていくコナンですが、今回は珍しく推理ミスをします。
それが意図するものとは果たして何なのでしょうか?
犯人は二人だった!!
コナンの映画作品では犯人は一人ですが、この「水平線上の陰謀」では犯人が二人という唯一異例の展開がありました。
そして本作では、犯人があらかじめ前半部分から怪しい行動をとり、真犯人がそれを利用するという倒術形式と呼ばれる演出がとられています。
コナンは始めから怪しい行動をとった、日下ひろなりを犯人だと難なく見抜きますが、真犯人は秋吉美波子でした。
「コナンが推理ミスをした!」と驚かせる手法でもあるのでしょうが、これが後々の小五郎の名推理につながる見事な伏線となっているのです。
船に辿り着くまでの時間制限
船に残る小五郎の元にコナンがモーターボートで向かうシーンでは、間に合うか、間に合わないかというハラハラドキドキ感が演出されています。
真犯人の美波子にボコボコに打ちのめされる小五郎ですが、これもコナンが船に着くまでの時間制限を煽る見事な演出なのです。
「コナン、間に合って!」と観ている側を映画に引き込ませる為の心理作戦とでもいうのでしょうか。
時間の制限がある事で、物語に大きく感情移入させる、そして登場人物を思わず応援したくなるような演出方法がとられているのです。
小五郎の名推理が冴える!!
いつもは名探偵ならぬ、“迷探偵”としておとぼけ推理を展開する小五郎。
いつもコナンの力で事件を解決に導きますが、どうして「水平線上の陰謀」ではコナンよりも先に名推理を展開する事ができたのでしょうか?
ウェルカムパーティーでの推理ミス
小五郎はウェルカムパーティーで美波子が犯人だと推理をしますが、証拠は何も無し。
「トイレタイム!」と言って会場に笑いを誘い、その場から退出する小五郎ですが、これが逆に小五郎の探偵魂に火を付けたのでした。