出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B0756865L3/?tag=cinema-notes-22
2016年公開のアニメーション映画、『レッドタートル ある島の物語』。
監督はオランダ人のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット、脚本をフランス人のパスカル・フェランが担当。
製作スタジオも、ワイルドバンチ(フランス)、ベルヴィジョン・スタジオ(ベルギー)など、国際色豊かなことが特徴です。
なにより、日本からはあのスタジオジブリが共同製作に参加したことで話題になりました。
監督の『岸辺のふたり』を見たジブリの鈴木敏夫プロデューサーが長編オファーを出したことから、監督の実力も窺えます。
ここでは、そんな監督が描き出すアーティスティックな物語の意味を考察します。
象徴の世界で繰り広げられる物語
まず注目すべきは、この作品には、ほぼセリフがないという点。
説明的なものは極力排除され、場面から読み取る、あるいは感じ取ることが必要になっています。
これは、遠目からの映像が多いことや、人物の顔が記号的に簡素化されていることなどからも意図された演出だとわかります。
この物語はあくまで象徴的なものとして捉える必要があることに注意して、物語を紐解いていきます。
無人島が象徴すること
作品が象徴的であることを踏まえると、男が漂着した無人島についても考える必要があるでしょう。
島には人が住んでいる形跡は全くなく、自然そのものを象徴していることは明らかです。
ただ、男がなぜここに流れ着いたのかについては最後までわかりません。
これは、人は流されるようにしてどこかに辿り着き、そこで生きていかなければいけないという示唆なのかもしれません。
男が試行錯誤を繰り返した結果、最終的にここで生きていく決断を下す点も、この解釈を裏付けているように思えます。
女が出現した意味を考察
脱出に失敗した男が、怒りに任せてひっくり返した赤いウミガメ。なぜその姿は女に変わったのでしょうか。
亀の恩返し? 異類婚姻譚の類型
これは、亀からの恩返しだったのではと推測できます。
男が島についてすぐ、卵から孵ったウミガメの子供が海に向かうシーンがありました。
そのうち一匹が、海ではなく陸の方へ向かおうとしたのです。男はそれを拾い上げて、海へ行かせてやりました。
助けられた動物が恩返しとして妻になる。ここには『鶴の恩返し』などに見られる「異類婚姻譚」の類型が見出せます。
昔話の『浦島太郎』は、まさに亀が登場する例です。
亀女房 – 例:浦島太郎(明治時代になるまで、乙姫は亀であった。)
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/異類婚姻譚
作品の寓話的性格が強く表れたと考えれば、これは納得の展開ではないでしょうか。
生と死、生まれ変わりのテーマ
では女がすぐに登場しなかった理由はなぜでしょう。
亀が女になる直前、男がアシカの死体から皮をはぐシーンがありました。そこではアシカに蠅がたかっています。