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【英国王のスピーチ(ネタバレ)】史実との違いを解説!実在の英国王を描いた監督の想いとは?製作開始に時間を要した理由も紹介

出典元: https://www.amazon.co.jp/dp/B07M5X1M2S/cinema-notes-22

英国王ジョージ6世の吃音をテーマにした「英国王のスピーチ」。

歴史を基にした作品ですが、中には史実と違う部分もあるようです。

違う点があるならフィクションにすればいいのにと思ってしまいますが、実在の英国王を描いたのには監督のある想いがありました。

製作開始にかなりの時間を要した映画なのですが、その原因は主人公ジョージ6世の妻であるエリザベス女王が関係しています。

彼女が製作開始を遅らせた理由とは一体何だったのでしょうか。

史実との違い

英国王のスピーチの真実 〜ジョージ6世の素顔〜 (字幕版)

映画「英国王のスピーチ」は史実を基にして作られましたが、いくつかの相違点があります。

年数の圧縮

映画では1934年にジョージ6世(アルバート王子)とローグが初めて会ったという設定になっています。

しかし彼らが出会ったのは1920年代。映画の中より10年以上も前の出来事でした。

しかもジョージ6世は1927年にはすでに演説を成功させています。なぜ10年以上の時間のズレを生じさせたのでしょうか。

ヒトラーは1933年に首相に指名され、1939年に第2次世界大戦が勃発しました。

監督はこの歴史に絡めたかったのかもしれません。

もし史実の通りに映画を作ってしまったら、ヒトラーの演説をテレビで観た時のジョージ6世の感心した様子は効果的ではないでしょう。

なぜならすでにジョージ6世は吃音を克服しているのですから。

ジョージ6世もすでに堂々とスピーチできていたと推測すると、食い入るようにヒトラーの演説を観るシーンは必要ないはずです。

それに戦争が始まろうとしている緊張感と、ジョージ6世のスピーチが成功するかどうかの張り詰めた雰囲気

この2つを同じ時間軸に設定することで映画がドラマチックに展開すると考えたはずです。

吃音の誇張

直輸入、大きな写真「英国王のスピーチ」ジョージ6世、コリン・ファース、
主人公のジョージ6世の吃音は作中ほど酷くなかったようです。

ですが吃音で苦しんでいる人にとっては、程度に関わらず心に傷を負っています。

吃音が軽度だったから大したことはなかったなどとはいい切れないはずです。

敵対的すぎる

エドワード8世やジョージ5世が敵対的に描かれています

エドワード8世に関しては、ジョージ6世の吃音を馬鹿にしているシーンがありました。

それにジョージ6世が王座を狙っているといいがかりをつけるシーンも。

またジョージ5世はジョージ6世に直接スピーチの手ほどきをする際、なかなか読めないことを叱責する場面があります。

ジョージ6世の吃音は周囲の人達からの圧力や王族という立場によるストレスが原因でした。

その事実を分かりやすくするために、周囲の人達がジョージ6世に敵対しているかのように描いたのでしょう。

心の問題は実際にはそれほど分かりやすい原因から引き起こされていない場合もあるはずです。

上映時間は限られていますから、その中で観客に効率的に訴えかけるための演出だったのです。

製作開始に時間を要した理由

英国王のスピーチ (名作映画完全セリフ音声集―スクリーンプレイ・シリーズ)

この映画は発想から製作に至るまで30年の時を要しました。

これほど長い間製作されなかったのにはどのような理由があるのでしょうか。

当時ローグが残した治療記録を基に映画を製作しようと試みたのですが、そこで大きな問題に直面してしまいました。

その治療記録は英国王室の許可が無くては利用できなかったのです。

ジョージ6世はすでに他界し、その妻であるエリザベス女王に許可をもらわなければなりません。

エリザベス女王にとっても吃音との戦いは辛い過去

自分が存命中には製作しないことを条件に、治療記録の許可を与えたのです。

エリザベス女王が他界した2002年から制作が開始されました。

製作開始までこれほどの時間を必要としたのには、王室の苦悩の深さが関係していたといえるでしょう。

監督の想い

KING'S SPEECH

「英国王のスピーチ」は実在の英国王を描いた映画です。監督はなぜ史実を作品にしようと思ったのでしょうか。

脚本家サイドラーの存在

ポスター アクリルフォトスタンド入り A4 パターンD 英国王のスピーチ 光沢プリント

「英国王のスピーチ」の脚本家であるサイドラーは幼いころから吃音に悩まされていました

彼が吃音になったきっかけは第2次世界大戦のストレス。そんな彼を励ましたのがジョージ6世です。

吃音を克服し、ラジオで国民を励ますジョージ6世の姿はまさにサイドラーの希望でした。

ジョージ6世に対する感謝を作品にしたいと強く感じたサイドラーの存在があったからこそ「英国王のスピーチ」は誕生したのです。

製作開始まで30年も待ち続けることができたのは、ジョージ6世への敬意と熱い想いがあったからに違いありません。

監督の母が仲介役

ある日監督の母は「英国王のスピーチ」の台本を読む朗読会に参加し、その内容に衝撃を受けます。

すぐさま息子である監督に「英国王のスピーチ」を手掛けるよう伝えたのです。

監督の母はオーストラリア人でした。ジョージ6世の苦悩と向き合ったローグもオーストラリア人です。

オーストラリアはイギリスの植民地だった過去がありますから、その肩身の狭さは痛いほどよく分かったはず。

医者の免許も持たずイギリス人でもないローグが英国王からの信頼を受ける実話は監督にも驚きと感動を与えたに違いありません。

この史実を世界に発信したいという想いが監督の心に沸き起こったのは当たり前のことだったのではないでしょうか。

描かれなかった裏側

英国王のスピーチ――王室を救った男の記録

ジョージ6世が主役だったので兄エドワード8世は脇役に徹した映画になっています。

ジョージ6世が告白したように、王室の躾は一般人には想像し難いほど厳しかったでしょう。

同じ環境で育った兄弟ですから、エドワード8世にも相当なストレスがかかっていたはずです。

兄エドワード8世のトラウマ

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作品中でのエドワード8世は離婚歴のあるアメリカ人女性に情熱を注いでいました。

確かにそれは事実ですが、彼が恋愛に溺れるには理由があったようです。

英国王室では王と妃が育児をしないことがルールになっているようで、乳母が全ての面倒をみます。

そのため王子達は両親の愛を充分に感じることができないのです。

ジョージ6世が吃音になり、エドワード8世が恋愛に溺れました。

それは満たされない愛へのコンプレクスが表面化した結果だと捉えることができるのではないでしょうか。

両親から受けるはずだった愛を女性に向けるしかなかったエドワード8世。

作品中ではただの自由奔放な人物としてしか描かれていませんでしたが、彼もまた心に傷を負った人物の1人だったのです。

シンプソン夫人の真実

王冠を賭けた恋―ウインザー公爵夫人の華麗な人生

エドワード8世を騙して手玉に取ったように描かれているシンプソン夫人。

しかし実際は彼女からエドワード8世に言い寄ったわけではなかったようです。

エドワード8世が彼女に猛アタックし、押し切られるような形でシンプソン夫人は交際を始めたとのこと。

本当のことは当事者でないと分かりませんが、エドワード8世は彼女に母性を求めていたのかもしれません。

彼らの人生がほんの一部しか作品中で触れられていないため、悪い人間として見られてしまう可能性があります。

しかしそれはあくまでも映画の演出であることを忘れないで観た方がいいでしょう。

監督が伝えたいこと

The King's Speech

ジョージ6世とローグの、身分を超えた友情がテーマになっている「英国王のスピーチ」。

そこだけを切り取ってみると私達庶民が共感できる部分は多くありません。

しかし観る者をじんわりと感動させるのはなぜでしょうか。

ローグの成功と影

ポスター アクリルフォトスタンド入り A4 パターンB 英国王のスピーチ 光沢プリント

王族相手にも対等な関係を要求し、自分のスタイルを崩さなかったローグ。

自信とプライドを持ち合わせた彼は向かうところ敵無しのように見えます。

しかし彼には演劇の舞台に立ちたくてもオーディションで落とされてしまうという一面もありました。

ジョージ6世の信頼を得ることに成功した彼が自分の本来の夢を叶えられていないという現実。

誰もがパーフェクトではないのだというメッセージが伝わってきます。

心の葛藤

ジョージ6世に限らず困難に立ち向かう場面は私達にも訪れます。国王だろうと人間であることには変わりありません。

治療に何度も心が折れるジョージ6世はいつまでも自信が持てず、自分には無理だと弱音を吐きます。

その姿はあまりにも人間的です。ここに多くの人が自己投影したのではないでしょうか。

不可能と思われたことでも真剣に向き合い続ければ道が開けることを実証したジョージ6世。

この映画がノンフィクションであることがその説得力を強めているのです。

歴史を知らなくても大丈夫

ポスター アクリルフォトスタンド入り A4 パターンE 英国王のスピーチ 光沢プリント

ジョージ6世が国王になったのは第2次世界大戦直前のことでした。

チャーチル首相やヒトラーなど歴史にその名を刻む登場人物も描かれています。

歴史をあまり知らない人には謙遜されがちな映画にみえますが、そんなことはありません。

この映画は歴史劇ではなくヒューマンドラマとしての要素が強いのです。

歴史の蓋を開けたらそこには人間の弱さがあった。

そんなことを気付かせてくれるのも「英国王のスピーチ」の凄さなのかもしれません。