当時のタエ子は、父親のビンタになぜわかってくれないのかという理不尽さを感じたのではないでしょうか。
ラストで子供が見せる寂しそうな表情
劇中のラストシーンで、トシオとタエ子を見送る子供たちの表情は曇っています。
ハッピーエンドなのに、なぜ子供たちは複雑な表情だったのでしょう。
置き去りにされたから
本作のキャッチコピーは「私はワタシと旅に出る」です。
一緒に旅に出たのに、タエ子は最後に小学5年生のワタシを置き去りにしてしまいます。
これはタエ子が先に進む為に必要なことだったのです。
子供たちは幸せになっていくタエ子を祝福しながらも、思い出が心の奥深くにしまわれることに寂しさを感じていたのでしょう。
タエ子の自立を描いている
子供から大人になるというのは、甘えを捨てることでもあります。
自分の意志で動き出したタエ子は、過去の甘い自分に別れを告げたのです。
人は学校から卒業する時に、未来への期待とこれまでの生活への別れの両方を経験します。
最後の子供たちは、これまでのタエ子の生活を象徴しているようです。
二度と戻らない自分の過去には、いつか忘れてしまうだろうという寂しさも含まれているものです。
タイトル「おもひでぽろぽろ」がラストを物語る
ラストシーンでタエ子は、小学5年生の思い出である子供たちに一切視線を向けていません。
彼女は過去に捕らわれることもなく「過去から変わらない自分」を捨てたのでしょう。
タエ子の過去には後悔が沢山存在していました。
彼女はそんな後悔をずっと引きずっていたのです。
後悔=いい子であることだったのでしょう。
いい子であることをやめたタエ子は、過去から自由に羽ばたきます。
小学5年生の子供たちは消えていくことになります。
これから、ぽろぽろとタエ子の思い出は崩れて色褪せていくことでしょう。
子供から大人へ変わる切なさを味わえる映画
『おもひでぽろぽろ』は、子供のままの自分を捨て自立した大人になっていく話です。
本作は自立する時の明るい期待や、なんとも言えない寂しさを上手く表現した名作です。
子供時代に訪れた場所に昔の自分を連れて旅をしたくなる、そんな思いを抱かせる作品ではないでしょうか。