が、数メートル先で引き返して助けてしまうのです。
これは仕事上にある冷酷なフランクと、人間としての優しいフランクが揺れ動く象徴的なシーンでした。
しかし人に信頼され、好かれるフランク
彼は映画中の様々な人物に好かれている、という描写が見受けられます。
最初の銀行強盗からは恐れられているのか、一言で銃を借りています。銀行強盗がフランクを従わせるのに必要な銃をです。
そしてフランクを気遣う警部もそうでしょう。
彼は最初からフランクの裏の顔に感づいているような素振りを見せつつも、フランクの善人性は見抜いているようでした。
最終盤、フランクに事件を解決してもらうために彼の人質を演じたこともその裏打ちとなるでしょう。
犯罪組織のボスで因縁を持つことになったウォールも、フランクの持つ厳格な性格について気に入ったと話しています。
ヒロインであるライにはフランクを利用したいという打算はあったでしょう。
それによって彼に一晩で体を預けたりもしましたが、逃げられる状況で逃げなかったこともあり、フランクを信頼しているようでした。
また、最終盤でフランクは小型飛行機をジャックしましたね。
そのパイロットは脅されて運転させられていたはずですが、ワンカット後にはフランクに進んで協力しているという描写に変わっているのです。
パイロットはフランクの為に警察を呼んでいる点も、フランクのコミュニケーション能力が類稀なるレベルであることを窺い知ることが出来ます。
正義感の塊であるフランク
彼が善人から好かれるのはぶっきらぼうなりに善いことの為に動く事が理由でしょう。
そして同時に、悪人から好かれるのは『ルール』によって面倒ごとを避けられるためであり、利用しやすい相手だと思われるためです。
そんな中、フランク自身は善人の願いを受け取ることが得意なようです。
中盤でフランクを利用するために嘘をついていた事が発覚するライ。
彼女の言葉に込められていた人を助けたいという願いは的確に読み取り、彼女の助けとなるために人身売買の現場に乗り込んでいくのです。
これら全てのきっかけ、事件の発端となったのは『ルールを破った』という事でした。
しかしそれはそもそもフランクの優しさや、事態を放ってはおけないという気持ちからなのです。
人を助けたくて軍人になった彼なのですから、当然人が詰められているバッグは開けて、中の人を気遣ってしまうのでしょう。
そして間違ったことは正そうとする。優しくて正義感に満ち溢れた人物が、このフランク・マーティンなのです。