当時の映画では新しい試みであったといえるでしょう。
また、追手があくまで2人の視点からのみだったため、追手の正体がわからない不安と恐怖を見ている側も画面を通して共有することができました。
主題歌「雨にぬれても」と自転車の名シーン
ブッチとサンダンスの恋人エッタが自転車に乗って遊ぶシーンでは主題歌「雨にぬれても」が流れます。
銀行強盗や家畜を盗むことを繰り返していたブッチとサンダンスが、束の間の平和な日々に浸っているときですね。
本作の時代設定である1890年代当時、自転車は最新流行の乗り物でした。そんな自転車で野原を滑走することも、西部劇では斬新な試みだったのです。
バート・バカラックが作曲した名曲
バート・バカラックが作曲した「雨にぬれても」は、アカデミー賞作曲賞・主題歌賞を受賞した名曲です。
多くの賞を受賞した本作ですが、この曲の影響もかなり大きかったことでしょう。
物語の後半、エッタと別れる結末を思うと純粋に楽しむ2人の姿にぐっとくるものがあります。
劇中で2回出てくる自転車
印象的な名シーンのアイテムとして用いられた自転車ですが、物語の中盤に、もう一度出てきます。
ブッチとサンダンス、そしてエッタがボリビアへ向かうときのシーンですね。
「何が未来だ」
引用元:明日に向かって撃て!/ 配給会社:20世紀フォックス
こう言い捨て、ブッチは自転車をその場に放置していきます。
倒れた自転車の車輪が空回りしながら画面はセピア色に変わっていき、寂しげな印象を与えるなんとも切ないシーン。
彼らが求めているのは先進的な未来ではないのだと、暗示しているようなシーンとなっていました。
ラストシーンは誰もが納得の名シーン
本作の名シーンは、なんといってもラストシーンになるのではないでしょうか。
ブッチとサンダンスが負傷しながらも最後まで軽口を言い合い、それでも懸命に生き抜こうとする姿に感動の声が多く上がっていました。
このラストシーンから数々のパロディやオマージュが生まれています。
印象的な静止画によるラスト
ブッチとサンダンスの最期は、セピア色の静止画となり銃声によってのみ伝えられます。
この印象的な静止画の手法は、レッドフォード主演作の「コンドル」でも踏襲されました。
同じような手法が「明日に向って撃て!」本作の随所で使われています。
この後彼らがハチの巣にされるだろうことは容易に推測できますが、そこをあえて映像にせず、物語の一瞬を切り取って提示したのです。
そうすることで彼らが生きてきた瞬間の強さと儚さが鮮烈に表現されていました。
エッタのその後
物語の後半でエッタは故郷へ戻ることを決め、2人と別れることになります。
その旨を告げられたとき、2人は彼女を引き留めませんでした。
ここでは2人の表情が映し出されることなく彼女の寂しげな表情が印象に残る、切ないシーンです。
その後ラストまでエッタのその後が語られることはありません。彼女もまた実在の人物ですが、史実の中では消息不明となっていました。
ボリビアへ行く前、彼女が公言していた次の言葉通りの結末となったのです。
「あなたたちの死ぬ姿は見ない」
引用元:明日に向かって撃て! /配給会社:20世紀フォックス
彼らの最期を知ったとき、彼女はどんな反応をしていたのでしょうか。
それを映像で伝えることなく見る側が自由に想像することで、より映画の中の3人の関係や彼女の想いに寄り添うことができるのです。
これだけではない、とっておきの名シーン
主題歌とラストシーンだけが、本作の名シーンなわけではありません。他にもこの映画を語るうえで外しがたい名シーンを、少しだけご紹介します。
崖から飛び降りようとするシーン
追手に追い詰められた2人は究極の選択を迫られます。崖から飛び降りるか、不利な位置から戦うか、です。
ブッチは飛び降りるしかないと主張しますがサンダンスは頑なに拒否します。
その理由が「泳げないから」だったのは、こんな状況でも笑ってしまうようなコミカルな名シーンでした。