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アルフォンソ・キュアロンは撮影監督であるエマニュエル・ルベツキとの名コンビで知られるメキシコ出身の名監督です。

2人は『大いなる遺産』や『天国の口、終りの楽園』などで画的に美しい映画を作ってきました。

その代表作が2013年製作の『ゼロ・グラビティ』です。この作品でキュアロンとルベツキは各々アカデミー賞の監督賞と撮影賞を獲得しました。

ユニークな撮影方法や3Dでの劇場公開により宇宙空間の臨場感が前面に出ることになりました。が、そこには隠されたテーマがあったのです。

それにつながる画としてのメタファーは数多くあり、ここではその全容解明を試みましょう。

またリアルな無重力表現にこだわった理由やライアンが見せた犬の泣き真似の真意にも迫ります。

基礎となるメタファー

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『ゼロ・グラビティ』は宇宙空間を舞台にした単なるディザスタームービーではありません。

そこには数々のメタファーによって作られた別の物語があるのです。

生のメタファー:グラビティ

この映画のメタファーを語る上で最も基本となるのは原題でもある『Gravity(グラビティ)』でしょう。

重力を意味するグラビティは、この映画では生そのもの・生きることのメタファーだといえます。

映画の最終盤、地球に生還したヒロイン・ライアンが地上を歩き始めたときにこの原題が入ることで重力と生が明確にリンクするのです。

死のメタファー:デブリ

ロシアによる人工衛星の爆破によってその破片・デブリが地球の周回軌道に乗り各国の宇宙船が危険にさらされることになります。

そのデブリは死のメタファーではないでしょうか。周回軌道に乗ったデブリは約90分ごとに地球をグルリと一周して何度も襲い掛かってきます。

それは周期的にやってくる人生の災いにも似ているでしょう。または死の運命にも重なります。

現れては消えそしてまた現れるデブリはあらゆる生き物にとって決して避けられない悲劇を示しているのではないでしょうか。

生死の境界メタファー:ゼロ・グラビティ

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デブリ飛来の被害を受けたライアンは何度か宇宙空間に投げ出されることがありました。

その無重力のスペース:ゼロ・グラビティは生死の境界を示すメタファーなのではないでしょうか。マットの行動がそのヒントになります。

マットは絶望的に宇宙に投げ出されたあとも無線によってライアンへ助言を送ります。それはまるで死者からのメッセージのようでした。

それは後のシーンの伏線にもなります。死んだと思われたマットが窓から宇宙船に侵入しライアンに助言を与えるのです。

それはライアンの幻想のように描かれましたが、死んだマットに遭遇した霊視体験という見方もできます。

ライアンはひどく絶望した状態であり、そんなときに自分で自分の命を救うようなアイデアが生まれるのかという疑問がわくからです。

マットがあの世から救いに来たと見る方が自然でしょう。彼が壊した窓がすぐに直っていたのも霊の通り抜けの証拠ではないでしょうか。

そういう点からも、無重力のスペースは生者と死者が交じり合う境界のメタファーだったということが読み取れます。

生物の誕生や転生につながる数々のメタファー

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映画には人をふくむ生物の誕生を示す多くのメタファーがあります。そして深く見ると輪廻転生さえ読み取れるものもあるのです。

生還後すぐに立ち上がったライアンが示すもの

誕生を示す最も明快なメタファーはやはりライアンが宇宙船に戻り、丸くうずくまって空中浮遊するシーンでしょう。

それを見て子宮の中の胎児を想起した人は少なくないはずです。船内の細いコードが胎児のへその緒代わりになっていた演出も見逃せません。

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