ハーマイオニーに渡された本の物語の中で「死」という存在が登場します。その死は、3人それぞれの望みを叶えることを通して最終的にその3人の命を奪おうとします。
死とは私たち人間にとって絶対的に避けることのできない事柄です。どんなに足掻いたとしても、死は私たちを捕らえ続け、決して離しません。
私たちは最後は必ず死ぬ。このことをこの「死」という存在を通して表されています。
死に対してどう向き合うのか
私たちは日々の生活に追われ、自分がいつか必ず死ぬという現実から目を逸らすことが多いです。
しかし、この物語での3人目の者は、最後には死を迎え入れ、受け入れるという形をもって、死とともに安らかにこの世を去ります。
このことは、絶対不可避の死という現実を受け入れることによって、私たちは心安らかになるのだということを表しています。
最強の杖を手に入れても他人の命をおろそかにする者は虚しい死を迎えます。生命を蘇らせるというこの世の法則に反した行動をした者は、孤独で悲しみに包まれた死を迎えます。
死と向き合い、途中で逃げながらも最終的に死という現実を受け入れる者の心は救われるのです。
本作で死の秘宝を手に入れたのはヴォルデモートだった
ダンブルドアの墓から杖を奪ったヴォルデモート
本作で死の秘宝を直接手にしたのは、実はヴォルデモートだけです。それも本作の最後の最後に、あのダンブルドアの墓から奪うという形で、最強の杖を手に入れます。
本作がこれで終わってしまうということは、恐怖のヴォルデモートが勝利するのではないかと感じさせるほどの絶望感を私たちに与えることでしょう。
最強の杖を手にするヴォルデモートの存在の意味
ヴォルデモートがこの杖を手にすることには深い意味が含まれていると考えるのが妥当でしょう。
ヴォルデモートは世界を支配するために、そして自分が最も強い存在であることを誇示するために、最強の力を欲していました。
その悪魔的存在が最強の杖を手にする。このことは私たち人間の自己顕示欲や所有欲とも関係してくるでしょう。
自己顕示欲が強すぎることによって多くの人間は、心がヴォルデモートで象徴される悪魔的感覚に奪われていき、他者を傷つけてでも一番になろうとします。
所有欲が強すぎることで、私たちは自分に有利になるであろうものを他者から奪います。
このような人間心理を表している象徴が、まさに「最強の杖を手にするヴォルデモート」なのです。
ハリーポッターら3人の友情を引き裂こうとしたもの
ヴォルデモートの魂が保管されているロケット
分霊箱の1つであるロケットにはヴォルデモートの魂が保管されていますが、そのロケットを破壊するのは容易なことではなく、結局3人が交代してそれを持つことになります。
しかし、そのロケットはヴォルデモートの魂そのものと言っても過言ではありません。憎悪・恐怖の化身ともいえるヴォルデモートの魂の一部です。
そんなものを持っていては、自分の心の中のマイナスな感情が増長されるのは必然でしょう。