初恋の彼女との苦い思い出がそうさせたのだとも考えられます。
恋が叶わなかかったから、振り切るように故郷を出てきたのもあるけれど、それだけで30年間戻らないというのは考え難いです。
帰郷しないことで、逆に故郷と繋がっていたのではないかと思われます。
アルフレードとの約束を守っている間は、アルフレードと繋がりを感じられたのです。
離れていても、2人は一緒に映画の未来を生きていたのではないでしょうか。
現に、アルフレードの亡くなった知らせを受けて、トトは故郷に帰ります。約束は果たされ、契約は終了したのです。
切り取られたフィルム
火事に見舞われた
映画館は火事に見舞われましたが、検閲にひっかかった切り取られたフィルムは残っていたようです。
一緒に焼けてしまったのではありませんでした。
缶の中に保管されていた分が、焼け残っていてそれらをつなぎ合わせて、1本のフィルムが出来ていました。
トトのために繋いであった
検閲に引っかかるたびに、ラブシーンの部分を切り取り、上映のたびごとに観衆からため息や怒声が飛んだ、一つ一つのシーンに思い出が詰まっています。
それらのフィルムがアルフレードによって繋げられていました。
トトの忘れていた記憶も、その繋がれたフィルムを見ることにより鮮明に蘇り、楽しかった古き好き時代を懐しく思い出されたのです。
作品の思い出
アルフレードは映写技師として、その一生を村に捧げましたが、この村に住み続けることが最善だとは考えていませんでした。
映画は素晴らしいものです。
人々の気持ちをまとめ、楽しませ、日々の疲れを忘れさせてくれるけれど、映画はあくまで虚構で、人が作ったものです。
人から楽しまされて、虚構の世界で遊ぶ大衆になるのではなく、自分が人生を作っていく側になることをアルフレードはトトに望んでいました。
トトは見事に期待に応え、映画を撮り、人を楽しませる側になり、立派に映画監督として成功しました。
アルフレードは、父親のようにトトことサルヴァトーレを導いてくれたのでした。
微笑みの理由
そもそも映画の検閲がなければ、サルヴァトーレはアルフレードに出会っていなかったかもしれません。
繋がれた検閲済みのフィルムが、映画監督として成功したサルヴァトーレの人生の原点なのです。
そして繋ぎ合わされたフィルムとの繋がりが、育ての父との繋がりであり、人生を愛おしく感じ、彼は微笑んだのです。