いつかそれも歴史として語られるようになるわけですが、歴史は結果しか物語りません。
その場にいた人たちの想いや隠された真実などは誰も振り返ることはなく、残された「事実」のみが語られることになります。
戦争の当事者たちの想いは知られることはありません。
ナヴィと地球人との戦いはそうしたいずれかは語られなくなる戦争そのものを、歴史が語らない事実というものが確かにあったということを今一度考えてほしい。
この「アバター」の作られた時代を考えると、そういう訴えが隠されているように感じられます。
行きすぎた文明は滅びる運命か
弓矢や剣、火などの原始的な武器しか持たないナヴィに対して地球人は銃はもちろん爆弾や核兵器までを持ち込み、パンドラを攻撃します。
圧倒的な武力を誇りながらもエイワの怒りに触れた地球人はパンドラの生物たちに逆襲され、敗走することに。
人間は核を開発し、今やその威力は地球を滅ぼせるともいわれていますが、このシーンにはそういう現代の人間たちへの戒めが込められています。
地球は、自然は偉大な力を持っています。自然の力は時として人間の予想をはるかに超え、恐ろしい結果をもたらすことを私たちは身をもって知っています。
人間が全てではない、科学が全てに勝るのではないということをこのナヴィと地球人の戦争の結末は私たちに気づかせようとしているのかもしれません。
戦いが双方にもたらしたものは
この戦いでナヴィと地球人はそれぞれ何を得て、何を失ったのでしょうか。
ナヴィが得たもの、失ったもの
ナヴィはこの戦いで多くの仲間を失い、美しい自然や動物たちも失いました。
ですが新しい心強い仲間、伝説のトゥルーク・マクトであるジェイクが人間であることを捨て、完全なナヴィとして彼らの仲間に加わることになります。
戦いで素晴らしいリーダーシップを発揮したジェイク。ナヴィは新しい仲間とともにパンドラの再建に力を尽くしていくことでしょう。
地球人が得たもの、失ったもの
地球人も多くの人を失いました。そしてパンドラから撤退することになるので「アバター計画」に費やした莫大な費用が水の泡になったのです。
そして銃器を持たないナヴィたちに敗北を喫することによって、プライドも失いました。
でもそれは、地球人の在り方を、文明の在り方を、そして他者を尊重するということを学んだ貴重な機会でもあったのです。
終わりに
一見ハリウッド王道のストーリーと思われがちな「アバター」ですが、視点を変えてみるとさまざまなものが見えてきます。
一度はそのスケールの大きさに圧倒され、二度目はその隠された意味に注目して鑑賞してみる、そんな楽しみ方もいいかもしれません。