両者はお互いの関係を少しでも隠したかったのでしょう。
ラングはアメリカの操り人形で、イギリスの政治活動は全てアメリカの利益を目的にしていたということが世間に知れてしまうわけですから。
ラングの過去写真がその糸口になるのです。
込められたメッセージ
ちなみに現実のブレア元首相も、対テロ戦争を支持したのは英米関係の強化が目的で、アメリカに媚びを売ったと批判されたのです。
ラングは戦争で息子を亡くした軍人の凶弾によって命を落とします。戦争が、また新たに命を奪うことになる非常に痛ましいシーンでした。
背景を知って観ると、戦争に対するメッセージがより現実的に読み取れるようにも思えるのです。
会話に潜んでいた伏線 ルースの目的
しかしラングの死後、実際にCIAと繋がっていたのはラングではなく、妻のルースだということが明らかになりました。
全ては彼女の計画通り?
事実、彼女は映画の序盤でこう語っていたのです。
主人公「いつも助言を?」
ルース「ええ。彼は聞き入れた。最近までは」引用:ゴーストライター/配給会社:日活
何気ない会話ですが、この時点でルースがラングを操っていたことがわかるのです。
更にもっと前、主人公との最初の会話ではこんなことも。
「私があなたを推薦したの」
引用:ゴーストライター/配給会社:日活
彼女は最初から主人公をゴーストライターにすると決めていました。
出版社でのやり取りも無意味だったことがわかる、実はかなりショッキングなセリフです。
最終的にラングは命を落とし(そうでなくても逮捕されれば多くを失ったはずです)、彼女は莫大な遺産を手に入れることになるでしょう。
では彼女が全ての黒幕として考えていいのでしょうか。
実は、完全にはそうとも思えない点があるのです。
ルースの本当の姿
マカラの事故の不審な点を聞かされたルースはショックを受け飛び出し、ずぶ濡れで戻ったあとは主人公とベッドを共にします。
これが全てを知った上での演技だったとしたら、あまり意味のない行動のようにも思えます。
彼女が動揺した理由は何なのでしょう。
ルースには、主人公に怒りを見せる場面もありました。
主人公「できれば、あなたも政治家になりたかった?」
ルース「あなたは作家に(なりたかった)?」引用:ゴーストライター/配給会社:日活
「ラングの妻」としてしか見られていない発言への痛烈な返しですが、すぐに謝罪して彼女は言うのです。
「ゴーストにも心はある」
引用:ゴーストライター/配給会社:日活
マカラの死の真相を本当に知らなかったとしたら、ルースは全て知らされるほどの立場ではなかったという推測も成り立ちます。
ここでのゴーストとはルース自身のことも指していたのではないでしょうか。
彼女も大きなものに操られるだけの、何にもなれない自分に苦しんでいるように見えるのです。
ラングの運命は示唆されていた
ラングも政治的に裏から操られた、実体のないゴーストだったといえるでしょう。
国民に戦犯と呼ばれながらこの世を去る、あまりに空しい結末を迎えましたが、実はこの運命を示していたのではと思わせる会話がありました。