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【ゴーストライター(ネタバレ)】何気ない会話に隠されていた結末への伏線を徹底解説!ラングの過去写真が映される意味とは?

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B005WQWQR2/cinema-notes-22

2010年公開の映画、ゴーストライター。

監督は、戦場のピアニストなどでも有名なロマン・ポランスキー。緊張感のある画面作りも見どころです。

話を追うだけでも楽しめますが、政治的背景や、散りばめられた伏線を知ると更に面白く観ることができます。

ここでは、次第に明らかになっていく驚愕の事実と、登場人物たちの会話に巧妙に隠された伏線について解説します。

現実問題を下敷きにしたストーリー

El escritor

この映画を理解する上で、現実問題を下敷きにしたストーリーであることをおさえておく必要があります。

作中でラングはイラクへの軍派遣などで国内外から激しい批判を受けていました。

これは現実におけるイギリスのブレア元首相の政治問題と一致しており、彼がモデルになっていると考えられます。

それを踏まえストーリーを考察していきましょう。

ラングの過去写真の意味とは


Der Ghostwriter

主人公が秘密に迫る過程で、ラングの過去写真が重要な役割を果たします。

この写真からは何がわかったのでしょうか。

ラングは嘘をついている?

「妻に会うため政党に入った」と発言していたラングですが、写真の発見により、妻に出会うよりも前に労働党の党員だったことが判明します。

なぜラングの証言は事実と異なっていたのでしょう。

前任者マカラの死が不自然であるという証言までも得られ、不穏な空気が一気に高まります。

ラングには何か隠された秘密があるのではないでしょうか?

エメット教授の存在とマカラの死

カーナビの案内で辿り着いたエメット教授。彼はラングの過去写真にも写っており、両者には数多くの共通点がありました。

これらのことから、2人には何らかの繋がりがあると考えられます。

エメットはラングとの交友もマカラが来たことさえも否定しますが、写真やカーナビの存在から考えると、逆に怪しい事実に。

主人公が何者かの追跡を受けたことも合わせて考えると、フェリーからの転落死とされたマカラはここで殺されたに違いないでしょう。

イギリスとアメリカの癒着?

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更にエメットがCIAの構成員で人材担当だったことが判明。

政治に全く興味の無かったラングが政界に入ったのは、エメットの手引きによるものだったといえるのではないでしょうか。

そうであれば2人が事実と異なることを言っていたのも頷けます。

両者はお互いの関係を少しでも隠したかったのでしょう。

ラングはアメリカの操り人形で、イギリスの政治活動は全てアメリカの利益を目的にしていたということが世間に知れてしまうわけですから。

ラングの過去写真がその糸口になるのです。

込められたメッセージ

ちなみに現実のブレア元首相も、対テロ戦争を支持したのは英米関係の強化が目的で、アメリカに媚びを売ったと批判されたのです。

ラングは戦争で息子を亡くした軍人の凶弾によって命を落とします。戦争が、また新たに命を奪うことになる非常に痛ましいシーンでした。

背景を知って観ると、戦争に対するメッセージがより現実的に読み取れるようにも思えるのです。

会話に潜んでいた伏線 ルースの目的


Der Ghostwriter

しかしラングの死後、実際にCIAと繋がっていたのはラングではなく、妻のルースだということが明らかになりました。

全ては彼女の計画通り?

事実、彼女は映画の序盤でこう語っていたのです。

主人公「いつも助言を?」
ルース「ええ。彼は聞き入れた。最近までは」

引用:ゴーストライター/配給会社:日活

何気ない会話ですが、この時点でルースがラングを操っていたことがわかるのです。

更にもっと前、主人公との最初の会話ではこんなことも。

「私があなたを推薦したの」

引用:ゴーストライター/配給会社:日活

彼女は最初から主人公をゴーストライターにすると決めていました

出版社でのやり取りも無意味だったことがわかる、実はかなりショッキングなセリフです。

最終的にラングは命を落とし(そうでなくても逮捕されれば多くを失ったはずです)、彼女は莫大な遺産を手に入れることになるでしょう。

では彼女が全ての黒幕として考えていいのでしょうか。

実は、完全にはそうとも思えない点があるのです。

ルースの本当の姿

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マカラの事故の不審な点を聞かされたルースはショックを受け飛び出し、ずぶ濡れで戻ったあとは主人公とベッドを共にします。

これが全てを知った上での演技だったとしたら、あまり意味のない行動のようにも思えます。

彼女が動揺した理由は何なのでしょう。

ルースには、主人公に怒りを見せる場面もありました。

主人公「できれば、あなたも政治家になりたかった?」
ルース「あなたは作家に(なりたかった)?」

引用:ゴーストライター/配給会社:日活

「ラングの妻」としてしか見られていない発言への痛烈な返しですが、すぐに謝罪して彼女は言うのです。

「ゴーストにも心はある」

引用:ゴーストライター/配給会社:日活

マカラの死の真相を本当に知らなかったとしたら、ルースは全て知らされるほどの立場ではなかったという推測も成り立ちます。

ここでのゴーストとはルース自身のことも指していたのではないでしょうか。

彼女も大きなものに操られるだけの、何にもなれない自分に苦しんでいるように見えるのです。

ラングの運命は示唆されていた

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ラングも政治的に裏から操られた、実体のないゴーストだったといえるでしょう。

国民に戦犯と呼ばれながらこの世を去る、あまりに空しい結末を迎えましたが、実はこの運命を示していたのではと思わせる会話がありました。

映画の序盤、マスコミに対する声明文について主人公に指示するシーンです。

主人公「低くも高くもなく、怒らず喜ばず(そんな声明文を書けと)?」
ラング「そうだ」
主人公「何者です?」

引用:ゴーストライター/配給会社:日活

思わず吹き出して笑ってしまうラング。演技ではない、素の彼のように見えます。

これは、彼が自分は何者でもないことを理解していたということではないでしょうか。

政治に疎かった彼は、妻の助けがなければ現在の地位まで来るのが難しかったことを自覚していたはずです。

自分の意志で行ったという最近の政策は国際裁判にまでなり、自信を喪失している様子も。

ラングにはどんな時も笑顔を作れる一方、怒鳴り散らすなど、感情を制御できなくなる不安定な面もありました。

首相としての顔の裏側には、自身の実体がないことへの大きな不安があったのかもしれません。

そしてラストで撃たれ、本当に実体の無いもの(ゴースト)になるのです。

衝撃のラストと暗示されていた結末

ルースの秘密を暴いたあと、会場を後にする主人公。しかしその直後、彼もまた……。

あまりにも衝撃的な展開のまま、映画は幕を下ろします。そしてエンドロールでお気づきになった方も多いと思います。

主人公には名前がなく「ゴースト」とだけ記載されていることに。

彼は最初から最後まで、名前の無い存在でした。

何者でもない「ゴースト」

彼は自分について、こう言っています。

「真の作家じゃない」

引用:ゴーストライター/配給会社:日活

状況に流されるように行動し、どこか自信が無さそうな態度。そして、物語からのあっけない退場。

名前が無いことも含めて、この結末も暗示されていたのでしょう。

感情豊かなラングとは対照的な存在ながら、同じく儚い結末を迎えたのです。

主人公ゴーストの成し遂げたこと

Der Ghostwriter

ただしだからこそ、そんな彼が最後にとった行動は、映画の主人公として初めて一矢報いたシーンだったともいえます。

そうであれば、この場面にはただ空しい終わり方というだけでなく、少しだけ胸がすっとする救いのある場面ともいえるのではないでしょうか。

ゴーストたちの物語

Ghost

この映画では、実は明確に答えが示されてはいません。あくまで真実は隠されたまま、幕が引かれます。

主人公が実際にどうなったかさえ、映し出されないのです。

ラストのシーンでは、灰色の空の下でたくさんの原稿が儚く無残に舞い散っていきます。

まるで体制や戦争といった大きなものに操られ、翻弄されるしかない人々を表しているかのようにも見えます。

これは、そんなゴーストたちの物語なのです。