驚くことに「レオン」が映画初出演です。
「凶暴な純愛」という作品テーマに加え、彼女の「13歳独特の少女と女性の間で揺れる空気感」を切り取ることができた時点で、本作の成功は決まっていたのかもしれません。
「天才子役」の宿命として早熟な例がありますが、彼女の場合は2010年公開の「ブラックスワン」で、精神に変調をきたしていくバレリーナの役で第83回アカデミー賞主演女優賞を受賞。
本来の魅力に「凄み」を加えて第一線で活躍し続けています。
特技はダンス。
小学生の頃からすでに腹筋が割れていること、上述ブラックスワンで9キロの減量を敢行するなど、非常にプロ意識が強い女優としても知られています。
ゲイリー・オールドマン
レオンとマチルダ、2人を軸に据えた上で、残りの足りない部分をほぼ一人で埋めてしまったのがスタン演じるゲイリー・オールドマン。
「狂気」「暴力性」「衝動性」などを強調して加えることで作品に奥行きを与え、彼という闇があったからこそ、「暗殺者と少女の愛」という設定にも救いの光を感じることができるのでしょう。
劇中では本当に大丈夫か心配になるほどネジの外れた演技を披露してくれる彼。
本来の姿は謙虚で苦労人、子供好きな人物です(ただし飲酒トラブルあり)。
高い知性と深い狂気、つまり「かしこくてバカな人」を演じることではナンバーワンであり、「JFK」や「ハンニバル」などでも彼の魅力を味わうことができます。
同業者から高い評価を得る俳優としても有名で、ブラッド・ピットやジョニー・デップなどの超一流俳優も彼への深いリスペクトを表明しています。
レオンの見え方
レオンとマチルダの関係は、視聴者の捉え方によって2通りの見方ができます。
いわゆる親子モノとして
マチルダの設定上の年齢は13歳。
レオンについて詳細な年齢の記述は出てきませんが、少なくとも2人の関係について尋ねたなら、ほとんどの人が親子と答えるでしょう。
実際に冒頭~中盤辺りまでは、仕事をする父親(職業はともかく)とそれを手伝う娘のような擬似的な親子関係が成立しています。
私たちの「常識的なフィルター」を通した場合、前提情報をなければ「親子モノ+バイオレンスアクション」という解釈でまずは観賞するはずです。
ただ、映画館で目を輝かせたり、字が読めなかったりするレオンや、同じ年齢の男の子をまるで子供あつかいするマチルダの早熟性など、2人の物理的な年齢差を縮める、または逆転させるような場面が伏線として埋め込まれています。
こうしたギャップを目にした視聴者は、一種の違和感を持ちながら話を追いかけることになります。
ラブロマンスとして
マチルダとレオンがお互いを恋愛対象としていつ意識するようになったのか。少なくとも決定的な描写は本当に最後に1つあるだけです。
2人は、対照的な立場から「孤独」を抱えています。家族に大切にされていない、そもそもが1人であるという違いこそありますが、共通しているのは「愛情がよくわかっていない」ことです。
レオンはマチルダに少年時代に経験した「最初で最後の恋愛」についての話をします。
そこからの彼は殺伐とした、またとても規則的な世界で生きてきました。もしかすると彼の精神性はその頃から止まっているのかもしれません。
はじめて抱えた愛情が親へのものなのか、恋愛感情を伴うものなのかわからない少女と、心の時間が止まったままの男性。「レオン」は悲劇的で美しい純愛の物語という解釈もできます。
結末
マチルダは最後に再入寮を希望し、「レオンを愛した暗殺者」から「歳相応の少女」へと帰ります。
そして庭にレオンの友人であり分身の観葉植物を埋めました。
観葉植物を埋めるという行動からは、「家族として思いを相続する」というメッセージを見出すことができます。