金魚がアリを慰めているともとれる表現描写です。
もうすぐ幸福な事が訪れると、金魚がアリに教えているといえます。
イランにおいての赤色の意味
イランでは赤色は“再生や蘇りのシンボルカラー”とされています。
足に血豆を作ってまで一生懸命に走ったアリの足を赤色の金魚がつついて、治そうとしているのです。
また、足だけでなくアリの折れそうな心まで金魚が励まし、“大丈夫だよ”と言い聞かせている表現ともとれます。
タイトルに込められた想い
「運動靴と赤い金魚」というタイトルですが、英語だと「Children of Heaven」という原題で、直訳すると“天国(楽園)のこどもたち”という意味になります。
イスラムの世界では天国は最高の場所・楽園だと考えられているのです。
しかし反対に日本では天国=“死”というイメージが根強い為、「運動靴と赤い金魚」というタイトルとなりました。
また、金魚は貧困が故に、狭い世界で生きる事を強いられているアリとザーラの象徴ともとれます。
金魚は水槽の中から自分の力で出る事はできません。
お金持ちの世界に憧れているけれども、自分が貧困層の子供である事にアリはジレンマや嫉妬も少なからず持っています。
いつか、水槽の中から抜け出してやる!というアリの強い決意と意志が要所要所で垣間見られるのも、この映画の特徴です。
子供の視点で描かれている
この映画はアリという少年が主人公という事で、全編が子供の視点で描かれています。
そこにはどういう意図があるのでしょう?
イスラムにおいての子供の存在
イスラムの世界では子供達は“汚れのない純粋な美しいもの”とされている文化があります。
この映画の内容を端的にいえば、妹の靴を失くしてしまった一人の少年が妹の為に新しい靴を手に入れる為四苦八苦する物語です。
毎日、学校に行くのに一つの靴を交代で履くという物語は、まず子供がやるから成しえた世界観といえます。
大人がやったら、ただのコメディ映画のようです。
しかし子供がそれをやる事で、淡々としたこの映画が光を帯びたように輝きを持つといえます。
感情移入しやすい
アリとザーラを軸におく事で、子供ながらの世界観が出来上がっているのがこの物語の特徴といえます。
子供同士が会話するシーンなど、子供の時そういえばこんな事あったな、というような子供ならではの世界観を思い起こさせる描写が頻繁に使われています。
走るシーンが多い事もあり、最後のマラソン大会のシーンなどは思わず握り拳を作って応援したくなる表現が満載です。
この映画は大人向けの映画、大人が観る方が向いている映画といえます。
今、大人である人も最初から大人であったわけではありません。
誰もが子供時代を体験して大人へと成長したのです。