その魅力の真意に迫っていきましょう。

それぞれが事情を抱えている

閉所恐怖症と闘いながらトンネルを掘る役目を果たしたダニー、視力を失ってしまう偽造屋のコリン等、この映画はそれぞれの人物が何かしらの事情を抱えています。

ただの戦争映画で終わらせず、“脱走”という同じ目的に向かう事で皆に友情以上の絆が生まれていくこの映画。

戦争というものを描いているにも関わらず、思わず涙を流してしまうというようなシーンが一切描かれていないのもこの「大脱走」の魅力です。

この物語の主人公はヒルツですが、その他個々の登場人物にもちゃんと光があたっています。

登場人物が誰一人脇役ではなくそれぞれのストーリーを持ち、まるで一人一人が主人公であるかのような描かれ方がされているのです。

そこがこの「大脱走」という映画が長く、多くの人々に愛され、名作と呼ばれる一つの理由といえます。

色恋沙汰は一切なし!

またこの映画の魅力のもう一つとして挙げられるのが、男女間のあれこれを描いた恋愛的な要素が一切なしという所にもあります。

男の熱い友情映画とでもいえばいいのでしょうか。

女性の登場人物が一切いないという珍しいタイプの映画ですが、そこもこの映画にいい意味で色を添えています。

軽快な音楽との対比

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誰もが一度は聴いた事のあるであろう「大脱走マーチ」はこの映画において欠かせない重要な役割を担っています。

軽快なテンポのこの音楽が“戦争”という残酷なテーマと対比となっているのです。

口笛を吹いているかのような、明るいリズムの音楽ですが、それが戦争の残酷さをより一層際立てる存在となっています。

戦争をする人間の愚かさ

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最後のテロップで「この映画を50名の兵士に捧げる」と出るとおり、この作品は脚色はあるものの、事実を基にしたれっきとした戦争映画です。

皆、自由を求め家族の元へ、そして自国へ帰りたいその一心で脱走をはかりました。

収容所の所長もラストのシーンで手が震えているように、50人もの人間が脱走により銃殺された事に少なからずショックを受けています。

敵国の兵士ではあっても、こんな事は無意味でひどい事だと頭ではわかっているのです。

ただ自分は上からの命令に従うしかなかった、敵国ではあっても同じ人間同士なのだと。

「大脱走」が多くの人に愛される理由は戦争映画らしくない戦争映画、というところに一つ理由があります。

ラストで、ヒルツが一人ボールを投げる音が独房に響き渡るように、戦争の愚かさとその重みはずしんと私達の心に響き渡るのです。

約3時間という大作ですが、観る回数を重ねる度に新しい発見が得られる、不朽の名作映画といえます。

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