この映画の特徴として出演者が全員が(一人を除く=後述)悪人ということが挙げられます。
観客が今ひとつ感情移入できない点でもあります。
老人の立ち位置も、最初のうちは強盗に入られた被害者としての盲目の元軍人というもの。
だから観客は盲目だけどむちゃくちゃ強い老人を応援、コソ泥3人組のチンピラなんかやっつけてしまえ!と思うことでしょう。
ところが、なのです。
ラストに向かうストーリーの中で、もう一つ驚くべき事実が判明します。観客にとっても「鬼ごっこ」どころではなくなります。
大きなポイントへ近づいて来ました。
悪魔の所業
それは老人が自分の娘を交通事故で殺したシンディという娘を地下に監禁し、さらに自分の娘を取り返すべくシンディを妊娠させていたこと。
3人組はその事実に直面し、老人の肉体や感覚の強さにだけではなく、彼の本性である底しれぬ狂気に恐怖します。
老人は一転して被害者からサイコパスな加害者へと立ち位置が変わります。
観客にとっても俄然、老人の存在そのものが恐怖の対象となっていくのです。
悪魔の約束
老人と3人組の戦いの中でシンディは老人に誤って撃たれ死亡し、お腹の赤ちゃん(老人の子供)も道連れになってしまいます。
老人はアレックスとロッキーに、金はやるから事件のことは黙っていてくれと取引を持ち出したのです。
約束は守られたと見えるが
瀕死のアレックスにハンマーで殴られた挙げ句、地下に落とされた老人は「終わり」な印象を受けます。
が、そうではなかったのです。映画は最後の大きな山に向かって進んでいきます。
物的被害は無かった
話をこの映画の大きなポイントと指摘した点に戻しましょう。
盗んだ大金を手に、家を出て妹とLAで暮らそうとしていたロッキー。
しかしロッキーがニュースで知ったのは、殺したはずの老人が意外と軽傷だったこと、さらに彼の証言に驚いたのです。
彼は2人の賊に押し込まれ、自衛のため2人を射殺したものの、物的被害はなかった、と警察に語っていると。
被害はなかった! 老人はロッキーとの約束を守ったとも言えるでしょうが、この映画はそれでは終わらないのです。
残るのはロッキーだけ
アレックスとロッキーの前で取引をした老人は2人から了解を取り付けましたが、その後アレックスは殺され、残るはロッキーだけ。
そのことを頭に置いておかなくてはならないでしょう。
被害を隠した理由
老人は警察に対し、ロッキーの存在と大金が盗まれたことは喋ってません。
一応はロッキーに対して「お前も喋るなよ」というメッセージでしょう。
しかし、あの粘着質のサイコパス老人がロッキーをそのまま許しておくとは思えないのです。