正しいと思うことを信じ突き進む姿は、大人が忘れてしまった真っすぐな心を思い起こさせます。
アシタカの率直さを際立たせるシーンは、エボシ御前とのやり取りに隠されています。
アシタカが「曇りない眼で物事を見定め、決める」と言い放った時、エボシ御前はアシタカを笑いとばします。
物事はそんなに単純じゃない善のみでは生きていけない。
それがエボシ御前の意見であり世の中の多くの意見ではないでしょうか。エボシ御前にはアシタカが偽善者のように滑稽に映ったでしょう。
しかしアシタカは、全ての事情を理解したうえでそれでもなお信念を付き通そうとしていたのかもしれません。
アシタカは様々なところで「共存」を望んでいる
もののけ姫の重要な格となる部分ですが、アシタカは様々なところで共存を望んでいます。
もののけ達の自然界と生きる為に自然界をを破壊するエボシ御前、相容れぬ存在の共存こそアシタカが望んでいる世界です。
サンは人間を憎む獰猛な少女
サンは自然界を守る少女です。その為エボシ御前とは事あるごとに敵対しています。勇猛果敢な姿が印象に残りますが、実際のサンはどのような少女なのでしょう。
人間を許せない存在
サンは赤子の時に、山犬(自然)を恐れる人間によって生贄として差し出されました。時代設定を考えると、生贄の儀式はよくあった時期といえます。
生贄とされたサンですが、結局モロたちはサンを殺さず大切に育てました。
当然の事ながらサンは自分を捨てた人間を憎んでいます。さらに自分達家族の住む森を人間が破壊しているのです。人間に怒りを感じるのは自然な流れといえます。
「私は山犬だ」
サンの有名なセリフですが、人間として生まれながらも人間として育ててもらえなかった。
山犬によって守られてきたことを象徴するセリフです。
たった一言のセリフに、憎しみと悲しみが入り混じっています。憎むべき人間の血を引く自分を醜いと感じているようにも取れます。
その後アシタカに「そなたは美しい」とまっすぐな言葉を投げかけられ、思わぬ返しの言葉に少し照れるような様子もありました。
森と共に滅びる運命を受け入れている
サンにとっては自然界が全てです。人間界にはサンのいるべき場所がないのです。森が滅びる時は自分も滅びると心に誓っています。
勇猛なイメージが強いサンですが、それは命を懸けて森を守っているからなのでしょう。森にすむサンはシシ神の偉大さや自然界の尊さを誰よりも理解しているのです。
森が滅びたら、世界は終焉を迎えると感じているのかもしれません。
生きることが大きなメッセージ
もののけ姫は勧善懲悪の映画ではありません。各々が正しいと思う道を行き、結果敵対してしまうのです。
ラストシーンでもサンは人間を許すことが出来ません。異なるものの共存は難しく、映画ではハッキリした結果を出せないまま終わっています。
もののけ姫には決して幸せとは呼べない人生を歩む登場人物が多く登場していますが、どんな立場であっても「生きる」ことが大切であると訴える映画でもあるのです。